読んでナットク!自治体ICT
国が抱える大きな課題として、人口減少、地域経済の縮小があります。
特に人口減少は今後加速度的に進むと予測され、その結果、消費や経済力の低下が日本経済に影響を与えることが危惧されています。
人口減少は地域経済の縮小を呼び、地域経済の縮小が人口減少を加速させるという悪循環を生んでいるとされ、この悪循環を断ち切ることが課題解決につながると言われています。このため、地方において、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立し、その好循環を支える「まち」に活力を取り戻すことが求められます。
加えて、地方と東京圏の経済格差拡大などが、若い世代の地方からの流出と東京圏への一極集中を招いているという現状もあり、人口の地方分散をはかって地域間の諸格差を是正したり、地方から大都市圏域への人口流出を抑制したり、地方回帰を促進したりといったことを実現し、それぞれの地域で住みやすい環境を確保して「活力ある日本社会」を維持しようというねらいがあります。
国の動きも本格化しています。
国と地方が総力を挙げて取り組むための組織「まち・ひと・しごと創生本部」が2014年9月に設立されたのを皮切りに、11月には「まち・ひと・しごと創生法」が制定され、12月には、取り組みの指針となる「まち・ひと・しごと創生『長期ビジョン』と『総合戦略』」(以下「長期ビジョン」、「総合戦略」)が閣議決定されました。
「東京一極集中の是正」「若い世代の就労・結婚・子育ての希望の実現」「地域の特性に即した地域課題の解決」という三つの基本的視点のもと、地方創生がめざす方向や、今後5年間(2015年度〜2019年度)で取り組む政策の基本目標が示されています。
<地方創生がめざす方向>
<基本目標>
以上のような国の「長期ビジョン」と「総合戦略」をふまえ、自治体には、地域の実情に応じた「地方人口ビジョン」と「地方版総合戦略」を2015年度中に策定することが求められています。策定にあたっては、参考資料や手引きが公表されており、具体例も示されています。
都道府県と市町村の役割分担も明示されており、都道府県は、地域の有力産業群の育成や都市間の交通ネットワーク形成などの広域的な施策や、市町村との連絡調整・支援を行うことが期待されています。一方、市町村は、新規農業者の確保や、子育て世代包括支援センターの整備など、地域の特色や地域資源を生かした住民に身近な施策の実施が期待されています。さらに、広域観光や農村交流など複数の市町村間で連携したり、連携中枢都市圏や定住自立圏を形成したりするなど、複数自治体で共同して策定することも可能だとしています。
ほかにも、戦略の策定にあたって、地域課題に対する適切な短期・中期の政策目標を設定して効果を検証し、PDCAサイクルを確立することや、国が提供するビッグデータなどをうまく活用して従来の取り組みにとらわれない効果的な施策を定めることが重要ということが盛り込まれています。
すでに「長期ビジョン」と「総合戦略」を策定し公表している自治体、策定に向けた基本方針やどのように進めるかを公表している自治体、戦略を策定する事業者を募集している自治体など、現時点での自治体の対応はさまざまですが、安倍政権は「地方創生の主役は地域」ということを強調しています。自治体には、より一層の自主性、主体性を発揮し、住民自治、地域力を存分に活かせる施策の策定が求められていると言えるでしょう。
(2015年4月22日)
配信を希望される方へ
自治体ICTに関する旬な記事を月2回メールマガジンでお届けします。登録は無料です。