情報通信技術が進展し、膨大なデータの収集・分析ができるようになりました。ビッグデータをAIなどで解析することで、課題解決や業務改善、新たなサービス創出などに繋がっており、データそのものの価値が高まっています。その中でも特に利用価値が高いとされているパーソナルデータ(*1)については、個人情報に該当するかどうかが明確に定義されていないグレーゾーンが増えたことや、国民の不安や不信感など、さまざまな課題があり利活用が進みづらい状況にあります。
このような状況を打破するべく、保護すべきものと利活用できるものを明確にし、グレーゾーンをなくすことで、データ利活用を促そうと以下の法改正が実施されます。
今回は、上記法改正を受け、今後自治体にてどのような検討が必要になってくるかご紹介します。
自治体では、上記の法改正を踏まえ、個人情報保護条例の改正を検討することとなります。
特に行政機関個人情報保護法を参考として、以下3点について留意することとなっています。
1、2については、現在の条例で規定されていないものを新たに追加検討するという対応になります。また、改正後に保護すべき情報が増えるか否か、またそれはどの事務で使用しているのかなどを確認する必要があるでしょう。
3は、グレーゾーンだった個人識別符号を個人情報と定義した上で匿名加工して利活用できるようにするための新しい制度となります。例えば、福祉保健課などで保有する健診データなどは、新たな健康サービス立案のヒントとして利用できそうですが、そのままでは個人情報のため使用できません。こうした個人情報を含むデータをどのようなルールで加工するか、誰が加工後のデータの適正を審査するのかなど、検討・調整すべきことが多くあります。
総務省では、「地方公共団体が保有するパーソナルデータに関する検討会(以下、検討会)」において、自治体からの意見をヒアリングしながら課題を整理しています。検討会では、東京都の検討状況についても公開しており、個人情報保護条例の改定に向けての問題・課題などが整理されています。
検討会のスケジュールとしては、2月に非識別加工情報の仕組み導入、報告書骨子、3月に報告書をまとめる予定となっています。
では、すでに設置することが定められている国の行政機関等における非識別加工情報制度はどのようになっているのでしょうか。非識別加工情報の作成・提供の仕組みは以下のように考えられています。
出典:「(参考)国の行政機関における非識別加工情報の作成・提供の仕組み」(総務省)
民間事業者の提案を受けたら、行政機関等で審査し提案者との間で利用契約を締結し、非識別加工情報を作成・提供するという流れになります。
また、非識別加工情報の取扱いについては、個人情報保護委員会が関与します。ガイドラインや規則の整備なども予定されています。
また、非識別加工情報の適正な取扱いを確保するための規律を整備し、利活用の促進と個人の権利・利益の保護の調和のとれた制度を構築するとしています。
改正法の施行は以下のスケジュールとなっています。
出典:「改正個人情報保護法の施行スケジュール」(総務省)
前述のとおり、改正個人情報保護法は2017年5月30日に全面施行されます。改正行政機関個人情報保護法についても、同時期の施行が想定されます。各自治体の条例に関しては、今後検討会から出される報告書の内容も鑑みて、改正内容の検討を進めていく必要があります。
2016年12月には「官民データ活用推進基本法」も成立、施行されました。これは自治体も含めたデータの利活用を推進するための法律で、基本計画として以下が挙げられています。
これにより、データ利活用が活発化する環境づくりが加速していくでしょう。
マイナンバー制度も導入され、自治体が保有するデータが注目されることも増えてきました。また、自治体は今、内部統制制度導入が検討されるなど、業務の適正化や信頼できる組織であることが求められる社会状況となっています。そのため、データの利活用においても、情報を適切に取り扱い、守り、活用する環境・体制を整えていくことが求められています。
(2017年2月7日 公開)
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