交通系ICカードやスマートフォンを活用して、訪日外国人旅行者が日本で快適に滞在するための情報やサービスを提供するIoTおもてなしクラウドの準備が始まっています。今回は、このIoTおもてなしクラウドについてご紹介します。
政府は、国際的に日本への注目が高まる2020年を大きな契機ととらえ、社会全体のICT化を推進しようとさまざまな施策を検討しています。具体的なアクションプランの中に、「都市サービスの高度化(外国人観光客向けICT基盤整備)」があります。これを実現するための基盤として、総務省が中心となり事業を推進しているのがIoTおもてなしクラウドです。
IoTおもてなしクラウドとは、訪日外国人旅行者が、入国時から滞在・宿泊、買い物、観光、出国まで、ストレスなく快適に過ごせるよう、スマートフォン、交通系ICカード、デジタルサイネージなどを、クラウド基盤上で連携させ、多様なサービスを実現する仕組みです。
例えば、IoTおもてなしクラウドに登録したパスポート情報や自国語情報などの属性情報を、交通系ICカードやスマートフォンなどと紐付けて、ホテルでのスムーズなチェックインや自国語による経路案内といった、個人の属性・言語などに応じた情報提供や、支払手続の簡略化などのサービスを実現します。
出典:IoTおもてなしクラウド事業について(総務省)
前述した多様なサービス同士の連携と、その連携によって提供される具体的なサービスを検討するため、千葉・幕張・成田地区、渋谷地区、港区地区(竹芝エリア、六本木・虎ノ門エリア、乃木坂エリア)で地域実証がスタートしました。検証内容は次のとおりです。
例えば、千葉市美術館での実証では、あらかじめ中国・タイなどの旅行会社を通じて訪日外国人旅行者にICカードを配布しています。そして、訪日した際に成田空港近くのホテルや千葉市美術館などに設置された機器を利用して、このICカードにパスポート情報、優先言語などの属性情報を登録してもらいます。美術館入館前に電子チケットの手配をスマートフォンアプリで行うことで、このICカードに発券履歴が記録され入場チケットの代わりとなります。さらに、ICカードを展示室内に設置されたタブレット端末にかざせば、登録された個人の属性に応じ作品解説の言語が切り替わります。
また、地区内のインタラクティブ型のデジタルサイネージにこのICカードをかざせば自国の言語で近隣の観光地などを検索できます。そしてその観光地までの徒歩・車のルートをQRコードに変換し、スマートフォンで読み取ると、同じ地図ルート案内表示をスマートフォン上に表示することができます。このように、訪日外国人旅行者に快適に旅行してもらえるよう、さまざまなサービスを検証しています。
3月中には各地区で行われた実証実験の報告書が取りまとめられる予定です。さらに、2017年度にはこの結果をふまえて、機能を拡充し、観光地や地方都市など多様な地域での実証を行います。そして2020年までの社会実装に向け、継続的、自立的な展開を後押しするとしています。
また、IoTおもてなしクラウドは、訪日外国人旅行者の利便性を高めるだけでなく、地域経済と地方創生の好循環を生む仕組みとしての側面を持っています。地域の事業者などがIoTおもてなしクラウドを利用することで、個人の属性に応じたサービスの提供が可能になったり、Lアラートや自治体の災害情報などをデジタルサイネージに一斉配信することが可能になったりと、各地域でのIoT活用に役立てられることが期待されています。
(2017年3月21日 公開)
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