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東日本大震災以降、自治体におけるBCP(*)の必要性、重要性が再認識され、現在では、約9割の自治体においてBCP策定済みという状況になっています。ところが、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、「この状況で、大地震や台風などの自然災害が発生したら……」といった危機感が高まっています。そんな今だからこそ、あらためて自治体のBCPについて考えてみたいと思います。

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Business Continuity Plan:業務継続計画

自治体のBCP策定状況

自治体は、大規模災害発生時において庁舎が被害を受けたとしても、業務を停止するわけにはいきません。さらに、応急業務なども発生するので、非常事態に優先的に実施すべき業務を的確に行うためのBCP策定が重要です。
実際に、2019年6月に消防庁が実施した調査では、自治体においてはほぼ策定済みという結果が報告されています。

[イメージ]地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果(消防庁)
出典:地方公共団体における業務継続計画策定状況の調査結果(消防庁)

政府からも、災害を対象としたBCPを自治体が策定する際の参考資料が各種提供されています。
内閣府の「大規模災害発生時における地方公共団体の業務継続の手引き」、「市町村のための業務継続計画作成ガイド」や、総務省の「ICT部門の業務継続計画<初動版解説書>」「ICT−BCP初動版導入ガイド」などは、BCP策定に活用された方も多いのではないでしょうか。

災害BCPと感染症BCPの違い

災害を対象としたBCPは、ほとんどの自治体で策定済みとなっていますが、自治体の機能が停止するようなリスクは、地震や洪水などの自然災害だけではありません。いまだ収束の目途のついていない新型コロナウイルスのような感染症の大流行も想定すべきリスクのうちの一つです。

災害と感染症では、リスク特性に以下の違いがあるため、執行体制や対応手順などが変わってきます。
災害BCPが「いかに早く必要な業務を復旧させ継続するのか」を目的にしているのに対し、感染症BCPは、「不要不急の業務から順次休止・縮小していき、感染のピーク時でも優先業務は最低限継続させる」ことが目的となります。

[イメージ]新型インフルエンザと地震との違い(厚生労働省「事業者・職場における新型インフルエンザ等対策ガイドライン」にインターリスク総研が加筆)
出典:社会福祉施設・事業所における新型インフルエンザ等発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省)

特に以下3点が感染症BCPの重要なポイントとなります。

  1. 情報を正確に入手し、その都度、的確に判断をしていくことが重要
    感染の影響期間は、不確実性が高く予測が困難です。それでも、利用者・職員への感染リスク、業務を継続する社会的責任などの観点を踏まえて業務継続レベルを判断していく必要があります。
    そのため、正確な情報を収集し、その都度的確に判断していくことが求められます。
  2. 業務継続は、主にヒトのやりくりの問題
    建物設備やインフラなどに甚大な被害を及ぼす自然災害と違い、感染症ではヒトへの影響が大きくなります。そのため、感染拡大時の職員確保策をあらかじめ検討しておくことが重要です。
  3. 感染防止策が重要
    2.で示したように、感染症発生時における業務継続はヒトのやりくりが中心的な問題になります。事前に策定した職員の確保策を実現するためには、職員が感染しないための策も必要です。ですから、感染防止策についてもあらかじめ検討し、適切に実施しておくことが肝要です。

自治体における感染症BCPの取り組み

内閣官房が、2019年に3月に報告した「新型インフルエンザ等に関する業務継続計画調査」では、新型インフルエンザ等に関するBCPを「策定済み」とする自治体は26.0%で、「策定中・策定予定」とあわせても4割程度という結果が出ています。
現状、自治体には感染症BCPの策定義務がなく、急務に感じながらも策定できていない自治体も多いようです。しかし、一からBCPを策定する必要はなく、すでに策定済みの災害BCPを感染症に対応できるように修正することからでも始められそうです。

たとえば、長野県上田市では、「上田市新型インフルエンザ等対策行動計画」により、新型コロナウイルス感染症の対応に当たっていました。非常時の業務継続体制や優先業務などについては災害BCPを策定済みでしたが、対応の優先順位が自然災害と異なる部分もあるため、2020年4月に新型コロナウイルス感染症に対する「上田市業務継続計画(新型コロナウイルス感染症対応編)」を暫定的に定めています。

熊本県益城町では、もともとあった災害BCPに加筆する形で2020年4月に、「感染症対応業務継続計画・感染対応マニュアル」を策定しました。庁内で感染症が発生したと想定し、閉鎖するエリア、一部他庁舎へ移設し継続する業務、関係者の聞き取り、住民広報および庁内の消毒に関する手順などについて定めています。また、策定マニュアルに基づく訓練も実施しています。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される状況で、自然災害などが発生し避難所に避難することとなった場合、密集した環境下での集団生活により、感染のリスクが高まる恐れがあることから、2020年5月に新型コロナウイルス感染症の感染防護策を講じた避難所運営訓練を実施し、訓練の概要と結果について、報告書にまとめています。

新型コロナウイルスは、余談を許さない状況ですし、冬のインフルエンザの流行にも備えなければなりません。これからは自然災害が発生しても、十分な感染症対策が行えるようにBCPを見直してみてはいかがでしょうか。これまでにご紹介した情報の詳細を以下にまとめたので、ぜひご参考にしてください。

参考

(2020年10月12日 公開)

  • * 記事の内容は配信時点での情報をもとに作成しているため、その後の動向により、記載内容に変更が生じている可能性があります。

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