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2023年12月に「デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)」が閣議決定されました。
デジタル田園都市国家構想総合戦略は、デジタルの力を活用して地方の社会課題解決・魅力向上を目的とした政策です。「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」をめざしており、自治体においても、地域振興と魅力向上、社会課題の解決、住民サービスの向上などにデジタルの力を活用することが求められています。
2023改訂版では、政府の新方針や戦略の振り返りで整理された課題などが反映されました。

2023改訂版の概要とポイント

2023改訂版では、2023年10月に発足したデジタル行財政改革会議による「デジタル行財政改革中間とりまとめ」(2023年12月20日)や、デジタル田園都市国家構想実現会議で整理された、施策の深化・具体化や新規施策に関する当面の重点検討課題などが反映されています。

デジタル行財政改革会議は、急激な人口減少社会への対応として、利用者起点で我が国の行財政の在り方を見直し、デジタルを最大限に活用して公共サービスなどの維持・強化と地域経済の活性化を図り、社会変革を実現するために発足されました。「デジタル行財政改革中間とりまとめ」の基本的な考え方は以下となります。

  1. 地域を支える公共サービスなどに関し、システムの統一・共通化などで現場負担を減らすとともに、デジタルの力も活用してサービスの質も向上
  2. あわせて、デジタル活用を阻害している規制・制度の徹底的な見直しを進め、社会変革を起動
  3. EBPMの手法も活用し、KPIや政策効果の「見える化」を進め、予算事業を不断に見直し

「デジタルを最大限に活用して公共サービスなどの維持や強化をするとともに、地域経済の活性化を図って社会変革を実現する」ということがポイントで、2023改訂版にもこの観点が盛り込まれています。
2023改訂版は改訂前と比較すると、基本的な考え、施策の方向、KPIの数値などは変わっていません。しかしながら、取り組みの内容は具体化、高度化しており、これまで以上に政策間連携、施策間連携、地域間連携を推進するような記載となっています。
具体的な改訂の概要は以下のとおりです。

[イメージ]デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)における改定概要
参考:デジタル田園都市国家構想総合戦略(2023改訂版)(概要)(令和5年12月26日閣議決定)(内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局)P3に黄色マーカーを加筆

この中から自治体に関連する項目として、「デジタル田園都市国家構想交付金」と「行政サービス分野のデジタル実装の展開」(上図黄色マーカー部分)に注目して後述します。

デジタル田園都市国家構想交付金の対象となる新たなデジタル実装「TYPE S」とは?

まずは、デジタル田園都市国家構想交付金に関する2023改訂版の反映についてご紹介します。
2023改訂版では、デジタル実装タイプにおいて2点が追加されています。

  1. これまでのデジタル実装タイプ(TYPE1/2/3)に加えて、TYPE Sが新設
  2. TYPE3の要件に「AIを高度活用した準公共サービスの創出」の記述が追加

2023年10月に開催された「ICT利活用サミットin秋田」におけるデジタル庁の講演資料によると、TYPE Sは、交通、子育て・児童福祉、介護、防災、インバウンド・観光、教育の6分野で社会変革につながる自治体の先行モデルとなるような取り組みに対して、プロジェクト推進に要する経費を支援する交付金であることが記載されています。
審査に関しては、デジタル行財政改革事務局の各分野を所管するチームと連携し、個別事業の事前調整を経ながら選定し、執行段階でもEBPMや利用者の観点から伴走支援を実施するとのことです。

[イメージ]TYPE S(デジタル行財政改革先行挑戦型(ファーストペンギンタイプ))
出典:デジタルによる地域づくりの進め方 〜デジタル田園都市国家構想とデジタル行財政改革〜(デジタル庁)

また、講演資料ではTYPE3の要件に追加された「AIを高度活用した準公共サービスの創出」の事例のイメージも示されています。

[イメージ](2)高度にAIを活用した準公共サービスの創出の事例イメージ
出典:デジタルによる地域づくりの進め方 〜デジタル田園都市国家構想とデジタル行財政改革〜(デジタル庁)

この事例イメージでは、医療分野でAIを高度活用することにより、患者さんの既往歴などを勘案しつつ、オペ室や執刀医の空き情報などを分析して、病院のたらい回しを予防しながら、最適な救急搬送先、救急車をレコメンドするサービスを創出することができるとしています。その結果、効率化と品質向上を実現して人手不足に対応することが可能となります。

なお、AIの高度活用に当てはまらない機能やサービス例として、TYPE1の対象となり得る簡易的な活用事例(自動化・効率化が主となるもの)や庁内DXや業務効率化に寄与するにとどまり、住民生活の向上に貢献しない事業は対象外とされています。

業務改革を前提とした「フロントヤード」改革を推進

続いて、「行政サービス分野のデジタル実装の展開」についてご紹介します。改訂概要では「フロントヤード」改革の推進と、「国・地方共通相談チャットボット」の提供について記載されています。

フロントヤード改革は、自治体における住民と行政の接点を最適化し、住民利便性の向上と業務効率化を実現する総合的な取り組みです。具体的には、マイナンバーカードの活用、データ対応の徹底、庁舎空間の再定義などを通じて進められており、人口規模別や先駆的モデルとして12自治体が選出されています。

[イメージ]自治体フロントヤード改革が目指すもの(将来の姿)
出典:自治体フロントヤード改革に関する個別取組事例集(総務省)

上記の図にもあるように、オンライン申請やリモート窓口が実現イメージとして描かれています。
日立では、行政手続や自治体職員への相談が、オンライン上でできるサービスを開発しており、その実証実験を、2021年から複数の自治体と共同で行い、順次導入いただいています。
このサービスは、市区町村の役所から離れた場所で、オンラインによる行政手続などをできるようにするものです。実証実験は、公民館などで行われ、大型のディスプレイやタブレット端末が使われました。
行政サービスのデジタル化が進む中、その利用が難しい高齢者や外国人などの利便性を高めるほか、自治体の業務効率化につながることが期待されています。

最後に「国・地方共通相談チャットボット」についてご紹介します。これは、自治体職員の負担軽減を目的に、AIを活用して住民などからの問い合わせに対応する自動応答システムです。
総務省とデジタル庁が協力して整備し2024年3月26日から提供が開始されました。その後のシナリオ精度の向上、対象分野の拡大などが予定されています。

以上、2023改訂版の中から、「デジタル田園都市国家構想交付金」と「行政サービス分野のデジタル実装の展開」についてご紹介しました。

2023改訂版からも分かるように、先進的なデジタル技術を活用した事業を対象とした交付金の新設や、行政サービス分野のデジタル実装の推進など、自治体においてもデジタル実装の重要性が高まってきています。日立でも、デジタル技術を活用して地域の課題解決や市民サービスの向上につながる製品をご提供していますので、お役に立てればと思います。

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