読んでナットク!自治体ICT
ITにかかわる製品、システム、サービスは、いまや日常生活で欠かせないものとなっており、利用する人も多様化しています。そんな中、使う人の立場や視点に立って設計する「人間中心設計」が注目されています。
人間中心設計とは、製品やシステムの開発にあたり、使う人間(ユーザー)の立場や視点に立ってデザイン・設計を行うことです。ユーザビリティ(利用品質)の高い製品やシステムを開発することを目的としています。
従来の製品開発では、機能の豊富さ、性能の高さ、といった点が重視され、「ユーザーが使いやすいか」という点はあまり着目されてきませんでした。
ところが近年、ITシステムをはじめとした製品の高度化・複雑化や、ユーザーの価値観の多様化により、製品のユーザーインターフェースがどんどん複雑になり、ユーザビリティの低下が問題となっています。
特に、定期的に人事異動が行われる自治体のシステムでは、「マニュアルがなくても簡単に使える」「効率的な操作ができる」といったユーザーインターフェースが求められるなど、ユーザーの視点に立った人間中心設計の考え方が重要視されるようになってきました。
また、国からは行政機関の電子申請システムやWebサイトのユーザビリティ、アクセシビリティ向上のために、「電子政府ユーザビリティガイドライン」や「みんなの公共サイト運用モデル」が公表されています。
日立でも人間中心設計の開発プロセスを取り入れて製品の開発を行っています。
人間中心設計の開発プロセスでは、以下がポイントとなってきます。
たとえば、公共向け図書館情報総合システム「LOOKS-i」のユーザーインターフェースのデザインを決める際には、デザイナーが図書館に利用状況調査に行きました。そこで、現状の図書館システムの使われ方を観察し、ユーザーインタビューを行った上で問題点などをピックアップし、アイデアや改善点を加えていったのです。
具体的には、
というように、ユーザーや現場の工夫からデザインアイデアを創出し、使い勝手の良いユーザーインターフェースを開発しました。
今後、自治体を取り巻く製品やITシステムは、ますます多機能で複雑になっていくことが予想されます。さらに、住民が自ら操作する機会が増え、子供から高齢者までが利用するなど、利用者の広がりも加速されていくと思われます。
誰もが簡単に使え、「使って便利」「使ってよかった」と感じてもらうためには、人間中心設計の考え方や、その手法を用いて開発された製品に注目していく必要があるでしょう。
(2012年4月25日)
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