はい。大きくわけて二つの取り組みがあると思います。
ひとつは、いわゆる「植物工場」と言われるものです。工場やビルなどの施設内で、ITを使って、光や温度、二酸化炭素、栄養素などの環境を制御しながら、植物を育てるものです。このような取り組みはこれまでも行われていましたが、東日本大震災での農地の塩害対策としても活用が期待されています。
もうひとつは、田畑で行われる従来型の農業の効率化や高度化にITを活用するものです。例えば、「地図システムを使って小麦などの場所ごとの成育状況を管理することで、刈り取り作業の効率化を図る」といったものや、「土壌分析データや過去の作付け作物データを管理・分析することで、これから作付けしたい作物などを入力するだけで、推奨する肥料の種類や量が自動的に算出できる」といったものがあります。
そうですね。例えば、農地のある範囲ごとに温度、湿度、日射量、土壌水分、葉の湿り具合などのデータを測定できるセンサーを設置します。それらのセンサーが測定したデータを、無線LANなどのネットワーク経由でクラウド環境に集めることで、農業従事者が過去のデータなどと比較・分析を行い、農薬散布の最適なタイミングを判断したり、散水量を調整するなどといったことが可能となります。
当然、これまで以上に農業の生産性を向上させたいということはあると思います。ただ、それ以上に期待されるのが「農業経験者のノウハウ共有」です。
これまで、農業に関する細かなノウハウはなかなか数値にすることが難しく、経験者のカンなどに頼ることが多い分野でした。しかし、農業に従事する方の高齢化が進んでおり、経験の浅い生産者や新規の就農者へのノウハウの伝達が、差し迫った課題となっているのです。今回ご紹介したようなIT技術は、データの見える化という形で、農業生産にかかわる的確な意思決定を支援し、ノウハウ共有の手助けとなるのではないかと思います。
(2012年4月25日)
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