読んでナットク!自治体ICT
国や自治体、民間企業などが連携し、さまざまな観光施策を実施しています。2016年3月30日には、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」より新たな観光ビジョンが策定されました。目標実現のために、下記三つの視点を柱とする改革を掲げています。
一方で、旅行スタイルは多様化し、観光地を巡る旅だけではなく、地域の特色(自然、伝統文化、食など)を生かした体験型・滞在型の旅が注目されるなどの変化が見られています。
このような観光市場の変化もあり、いま、観光地域全体をマネジメントする「観光地経営」という視点が必要となっています。この「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役を担う法人である、日本版DMO(Destination Marketing/Management Organization)への期待が高まっており、観光庁において、各地における日本版DMOの形成・確立を強力に支援する体制が創設されています。2020年までに全国で100組織設立を目標としており、7月15日現在で88組織が登録されています。
また、「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりでは、「観光客を呼び込み地域経済を活性化させるためには、観光地を赤字経営にしない」、「インバウンド消費を増やして稼ぐには、どのくらいの観光客が訪れて、何にいくら消費して、地域への経済波及効果はどれくらいだったのか」などの現状把握がポイントになります。つまり観光地域の経営状況の「見える化」が重要となるのです。
とはいえ、現状把握が重要なことは認識していても、有識者がいないなどの理由からノウハウがなく、「見える化」に着手できないという地域もあるようです。そういった地域でも、国から現状把握のツールがいくつか提供されているので、活用するとよいでしょう。
まず、経済産業省が提供する「地域経済分析システム(RESAS)」があります。これは、産業構造や人口動態、人の流れなどに関する官民のビッグデータを集約し、可視化するシステムですが、4月にこのシステムを用いて地域の分析を行った自治体の利活用事例集がまとめられました。他の自治体がこのシステムをどのように活用しているかの解説をしているので、参考になります。
先日、観光庁が観光地域経済の「見える化」のモデル手法を公表しました。
岩手県平泉町、愛知県蒲郡市、京都府京都市、兵庫県、沖縄県名護市の5地域がモデル地域となり、複数の調査・分析手法を検討したものです。具体的にどのような調査票を使用して、どこで誰にアンケートを実施すればよいのか、アンケート結果をどのように分析して消費額を算出すればよいのか、といった手法がわかりやすく情報提供されています。
入込客数・観光消費額を把握する手法や、地域版の産業連関表を活用し、経済波及効果を算出する手法など、全国の各地域が参考にできそうな13手法を紹介しているので、地域の実情に合わせて参考にするとよいでしょう。
たとえば、京都市は、独自に設計した調査票を使用して対面式調査で把握したデータと、観光庁の訪日外国人消費動向調査の調査票データを活用し、京都市における外国人観光客の観光・消費特性を把握し、それをもとに地域の観光実態を把握するために設定・評価される指標(観光KPI)として下記を設定しました。
【京都市における外国人観光客の観光・消費特性】
【観光KPI】
このように、国から提供されているツールや各種統計データなど、すでにあるデータもうまく使って、観光地域経済の「見える化」を行い、地域にあった観光KPIを設定できるといいですね。
※企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称のこと(出典:観光庁ホームページ)
(2016年8月23日 公開)
配信を希望される方へ
自治体ICTに関する旬な記事を月2回メールマガジンでお届けします。登録は無料です。