IoT(Internet of Things)がさまざまなシーンで活用されるようになり、インターネットを介して膨大なデータを取得できるようになってきています。それらのデータをAI(人工知能)で分析し、新たな価値、サービスにつなげるといったことも実現化しています。
「日本再興戦略2016」では、日本が第4次産業革命(※)を勝ち抜くには、IoTやAIなどの技術を活用し、スピード感を持って先行的アイデアを実行すること、そしてその成果を横展開していくことが重要と言われています。また、住民サービスの充実や地域における新たなビジネス・雇用の創出などを実現し、地域の課題解決を図るための効率的・効果的なツールとしても、IoTやAIが強く期待されています。
※第4次産業革命:IoT・ビッグデータ・AI・ロボットなどの技術革新によって産業や社会構造の転換を図ろうとするもの
しかし、総務省が2014年に行ったアンケートによると、ICTを活用した街づくりに関心がある自治体が非常に多いのにもかかわらず、具体的に動いている自治体はまだ少ないことがわかっています。理由として、予算の制約や、具体的な利用イメージや用途が浮かばない、効果・メリットが明確でない、人材不足、推進体制がないなどの課題があるとしています。
出典:総務省 平成26年版情報通信白書
こうした状況の中、具体的な利用イメージや用途、効果・メリットなどを明確にしていくためにも、さまざまな分野で新たなアイデアを取り入れ、利用モデルを検討し、効果を明らかにしていくことが急務です。
総務省では、医療、教育、農業といった生活に身近な分野でIoTの活用を後押しする「身近なIoTプロジェクト」を立上げています。全国から下記の8チームが採択され、それぞれの分野のIoTサービスのモデル作りが進められています。
例えば、「8.海洋ビッグデータを活用したスマート漁業モデル事業」は、定置網漁において海洋ビッグデータを活用することで、新しい効率的漁業モデルを実証するとしています。漁業で使用するブイにセンサーを付けてデータを取得し、漁獲データや気象、潮流データなどと掛け合わせることによって、データに裏付けされた効率的な漁業と、獲りたい魚を獲る漁業の実現をめざしています。
こうした利用モデルを各分野で作り、それぞれの地域の事情に合った用途を選択し、実装できるようになっていくことが理想です。
また総務省では、こうした実証事業や先行モデルの成果を日本の隅々まで波及させるため、「地域IoT実装推進タスクフォース」を9月から開催しています。
「地域IoT実装推進タスクフォース」では、これまで取り組まれた実証事業の成果検証を行い、それらを横展開することによって地域にどのような経済効果をもたらすのかを明らかにしていくとしています。
また、2020年度までに実装する分野別モデルの設定や、達成目標(KPI)を設定した「地域IoT実装推進ロードマップ」が2016年内に策定されます。
出典:総務省 地域IoT実装推進タスクフォース資料 地域IoT実装推進ロードマップ(全体イメージ)(案)
このロードマップで設定されている目標を達成するための課題解決も含め、検討を進めるべく分科会も二つ開催されています。
このように、国は各地域でIoTが活用されるよう、さまざまな施策を検討しています。
ある調査会社によると、2014年の世界のIoT市場規模は約6,500億ドル、2020年までに約1.7兆ドルまで増えると予測されています。IoTによってさまざまなデータを取得し、それによって新たなサービスを生み出し発展させていくことが、これからの日本の経済成長の大きな鍵となっていくでしょう。
(2016年11月8日 公開)
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