個人などが保有する遊休資産(空間、モノ、カネ等)や能力(スキル、知識等)をインターネットを通じて共有する経済活動であるシェアリングエコノミー。代表的なサービスとして、民泊やライドシェアなどが挙げられますが、ここ数年でさまざまなサービスが普及してきています。
今回は、このような流れを受けて政府が取りまとめた「シェアリングエコノミー推進プログラム」について、その背景や内容、進捗状況をご紹介します。
シェアリングエコノミーの国内市場規模は、総務省「平成29年度版 情報通信白書」によると、2015年度に約285億円だったものが2020年までに600億円まで拡大すると予測されています。
スマートフォンやSNSの普及により、シェアリングエコノミーも身近なものになってきていますが、諸外国に比べると、まだまだ認知度や利用意向、利用率が低いことなどが課題です。
政府は、「未来投資戦略2017」において、シェアリングエコノミーを重点施策として位置付け、その発展によって社会問題を解決しようとしています。発展の妨げとなる課題を解消すべく検討会議を設置し、議論を重ね、規制緩和やルール整備などを進めています。検討会議の中間報告として公表されたのがシェアリングエコノミー推進プログラムです。
シェアリングエコノミー推進プログラムは、下記4本の柱を軸に、シェアリングエコノミーの普及・促進を目的とした取り組みで、安全性・信頼性の確保や認知度向上に向けたものとなっています。
政府は、シェアリングエコノミーの普及・促進は、「事故・トラブル時の不安」の低減が鍵だととらえ、推進プログラムの中で、シェア事業者が自主的ルールを策定する場合に遵守すべき事項を「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」として示しました。
このガイドラインを基に、官民によるシェアリングエコノミー普及団体のシェアリングエコノミー協会は、利用者の安全性・信頼性を確保するためのサービスの設計や、これらを維持するための体制を整備しているシェア事業者を認定し「認定マーク」を付与する制度を始めています。
また、グレーゾーン解消に向けては、ライドシェアサービスにおいて、参入の壁となっている規制を特例措置として緩和したり、民泊や通訳案内において、線引きそのものを見直したりしています。
認知度向上の取り組みでは、総務省が2017年8月からの自治体への「シェアリングエコノミー伝道師」派遣を開始したり、シェアリングエコノミー協会が、前述の「認定マーク」を取得したシェアリングエコノミーのサービスを二つ以上導入し、普及促進に向けたPRを実行している自治体に対し、「シェアリングシティ」として認定する制度を設立したり、官民一体となってその普及に努めています。
さらに、政府全体のワンストップ窓口として、自治体や事業者の相談・要望を受け付ける「シェアリングエコノミー促進室」が2017年1月に設置されました。
今後は、「シェアリングエコノミー促進室」が中心となって、関係者と連携しながら安全・信頼性の確保や認知度向上の取り組みを強化していきます。毎年1回、シェアリングエコノミー推進プログラムの進捗状況を取りまとめて公表するとともに、サービスの進展状況を踏まえ、モデルガイドラインを含めて適宜シェアリングエコノミー推進に関する施策を見直すとしています。
国家戦略特区においての民泊やライドシェアの実証実験が始まるなど、自治体におけるシェアリングエコノミーの取り組みも増えています。2017年11月時点で北海道天塩町、岩手県釜石市、千葉県千葉市など15自治体が「シェアリングシティ」として認定されています。
自治体でのシェアリングエコノミー活用でポイントとなるのが、地域課題を明らかにした上で、どのようなシェアリングサービスが有効なのかを見極めることです。シェアリングエコノミー促進室では、自治体の課題と対応するシェアリングサービスを下記の通り整理しています。
たとえば、「シェアリングシティ」として認定された秋田県湯沢市では、子育てしやすい環境づくりにシェアリングサービスを活用しています。同じ幼保小の親同士、近所、知人・友人などがつながり、子供の送迎や託児を頼りあう仕組みを活用し、共助コミュニティ浸透を図ることで、子育て世代の住みやすい街を作ろうとしています。
少子高齢化などの社会問題をかかえ、今後自治体経営は厳しくなっていくことが予想されます。
公共の遊休資産の有効活用、新たな行政収入の確保、新たな観光資源の開発など、地域振興への貢献が期待されるシェアリングエコノミー。総務省などの支援施策も実装フェーズに突入しており、今後の動向にも注目です。
(2018年1月15日 公開)
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