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Q.総務省で「自治体戦略2040構想研究会」が開催されました。その背景を教えてください

はい。日本の人口は、2008年をピークに減少し、大都市部を中心に高齢化が急ピッチで進行すると見られています。2040年頃には総人口が毎年100万人近く減少し、自治体の税収や行政需要に極めて大きな影響を与えると危惧されています。このように日本がこれから本格的な人口減少と高齢化を迎えるなか、住民の暮らしと地域経済を守るために、自治体は行政上の諸課題に的確に対応し、持続可能な形でサービスを提供していく必要があります。

そこで、今から20数年後にあたる2040年頃の自治体が抱える行政課題を想定し整理した上で、今後の自治体行政のあり方を展望し、早急に取り組むべき対応策を検討することを目的に2017年10月に本研究会が立ち上げられ、継続して議論が行われました。
本研究会において取りまとめられた第一次報告が2018年4月に、第二次報告が7月に公表されました。報告書では2040年頃までの自治体における課題が整理され、それに対応するための構想も提言されています。

Q.研究会で報告された2040年頃までの自治体における課題と、それに対応するための構想について教えてください

はい。本研究会では、自治体における課題を「子育て・教育」「医療・介護」「インフラ・公共施設、公共交通」「空間管理、治安・防災」「労働・産業・テクノロジー」の5分野に分類し、データを根拠にすることで、より具体的でリアルな課題を洗い出しました。主な内容は、次のとおりです。

2040年頃までの自治体における課題
分野 課題
子育て・教育分野 2033年頃の大学進学者数は2015年度と比較して16%減少する見込み。特に地方の減少が顕著で、小規模私立大学は経営が悪化する恐れがある。
その他、保育所ニーズの増加、小規模校の廃校、など。
医療・介護分野 2025年頃には253万人の介護職員の需要が見込まれるが、供給は215万人に留まる(約38万人が不足する)。
その他、高齢者数および一人暮らしの高齢者数の増加、入院ニーズの増加など。
インフラ・公共施設、公共交通分野 2034年頃までの公共施設およびインフラ資産の更新費用は、近年の新規整備と更新費用の合計を上回る(現状のまますべてを維持することは不可能)。
その他、公営企業の料金上昇、地方圏の鉄道・バス事業者の経営悪化など。
空間管理、治安・防災分野 2040年頃の1都市あたりの人口は、近年から2割程度減少し1970年と同水準まで下がる。
その他、空き家の増加、首都直下地震・南海トラフ地震の発生など。
労働、産業、テクノロジー分野 2040年頃に向けて生産年齢人口(15〜64歳)の減少が加速する(2030年頃には近年より12%減少)。
その他、ロボットやAI、生命科学と共存・協調する社会を構築することが求められるなど。

あわせて、自治体行政自体の課題についても整理されています。
たとえば体制面では、人口減少が進む2040年頃には少ない職員数での行政運営が必要となります。また予算面では、社会保障にかかわる経費や老朽化した公共施設・インフラの更新に要する費用の増大が想定されます。一方で、所得や地価が減少・下落すれば地方税収が減少する可能性もあります。

このように、2040年頃を想定すると、地方圏を中心に市町村単独での行政の継続が困難になることが見込まれることから、研究会では近隣市町村の連携による「圏域」単位での行政をスタンダードにし、都市機能などを守る構想を提言しています。また、圏域単位での行政推進を認める法律上の枠組みも必要としています。さらに、必要に応じ都道府県が市町村を補完・支援し、都道府県と市町村の垣根を越えて専門職員を柔軟に活用する仕組みも必要と報告しています。

本報告を受けて官房長官は記者会見で「総務省を中心に関係省庁が連携して対応策を議論していく必要がある」と述べています。
また、内閣総理大臣は総務省の地方制度調査会に対し、「圏域における地方公共団体の協力関係、公・共・私のベストミックス、その他の必要な地方行政体制のあり方について、調査審議を求める」と諮問していますので、今後の動きに注目ですね。

参考

(2018年8月27日 公開)

  • * 記事の内容は配信時点での情報をもとに作成しているため、その後の動向により、記載内容に変更が生じている可能性があります。

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