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今、自治体にはスマート自治体への転換が求められています。
これは労働力が減少していくことで生じる2040年問題が背景にあるためで、自治体が住民生活に不可欠な行政サービスを提供し続けるためには、職員が企画立案業務や住民への直接的なサービス提供など、本来業務に注力できるような環境を作る必要があります。
このような環境を作るための取り組みのうちの一つに「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会(以下、研究会)」があります。研究会では、2040年頃の自治体のあり方や、スマート自治体の実現に向けた実務上の課題(自治体における業務プロセス・システムの標準化やAI・RPAなどの活用)などが検討され、報告書がとりまとめられています。
スマート自治体とは、AI・RPAなどを活用し、職員の事務処理を自動化したり、標準化された共通基盤を用いて効率的にサービスを提供したりする自治体のことです。総務省の「自治体戦略2040構想」の中では、従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みとして、すべての自治体でスマート自治体への変換が必要だと考えられています。
出典:自治体戦略2040構想研究会 第二次報告(総務省)
具体的な業務でAI・RPAの活用方策を見てみましょう。
たとえば保育業務では、現状、住民による申請は紙ベースでデータ化されていないのでRPAは使えません。そこでオンライン申請への移行が必要となります。保育システムへの入力は職員が手作業で実施していますが、RPAが自動入力することで効率化が実現できると考えられます。また、現状保育システムは自治体ごとにバラバラなのでRPAの横展開や共同導入が困難ですが、システムの標準化を進めることで実現可能です。保育所利用調整は手作業で実施していますが、AIを活用すれば瞬時に調整できます。このように、AI・RPAの活用方策は、システムの標準化や行政手続きのオンライン化と密接に関連しているので、セットで取り組む必要があります。
出典:スマート自治体の推進について(IT総合戦略本部)
なお、研究会ではスマート自治体の概要を下記の通りまとめています。
研究会では、スマート自治体を2040年までに実現すべきと考え、その目的と手段を下記の通り整理して実現に向けたロードマップをとりまとめています。
目的 |
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手段 |
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報告書(資料5)スマート自治体実現のためのロードマップ(総務省)をもとに作成
業務プロセスの標準化については、自治体によって業務プロセスの粒度がまちまちなので、自治体間で業務を比較しながらベストプラクティスを見つけ出す取り組みに加えて、システムや様式・帳票の標準化やAI・RPAの共同化、電子化・ペーパーレス化などを通じて細かい粒度での業務プロセスの標準化を実現するとしています。
具体的な取り組みについては、2040年から逆算して2020年代に実現すべき姿、すぐに実施できることなどが示されています。たとえば、各テーマにおける2020年代に実現すべき姿は下記の通りとしています。
テーマ | 2020年代に実現すべき姿 |
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業務プロセス・ システムの標準化 |
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AI・RPAなどのICT活用 |
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住民・企業などとの間の申請・通知など |
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報告書(資料5)スマート自治体実現のためのロードマップ(総務省)をもとに作成
AI・RPAを実際の自治体業務で活用しながら実践モデルとして横展開することを目的にした実証事業もスタートしています。
これは、自治体の基幹的な業務(住基・税・福祉など)について、人口規模ごとに複数団体による検討グループを組み、そのグループ内でBPR(*)による業務プロセスの標準化を検討した上で、実践モデルを形成することを想定したものです。
実践モデルの形成に当たっては、AIやRPAなどの導入が有効な業務を検証・把握することとしており、導入後は、導入による効果について検証します。
最近、自治体においてRPA導入による業務効率化の実証が増えており、自動化による一定の効果も報告されているため、皆さまの関心も高いことと思います。現在は実証なので経費はゼロという自治体が多く、今後本格導入の際には予算確保が課題となってきます。実証などを経てRPAが共同利用できる環境が整えば、人材面や価格面の都合がつかず導入をあきらめていた自治体でも導入しやすくなると思われ、自治体における活用推進につながるでしょう。
(2019年6月10日 公開)
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