読んでナットク!自治体ICT
執筆:森重 福一(株式会社 日立システムズ 公共・社会事業企画本部 公共事業企画部)
マイナンバーカードの普及策として、マイナポイントによる消費活性化策とマイナンバーカードの健康保険証としての利用に向けた取り組みが実施されていますが、政府のマイナンバーカードの普及目標への到達には時間が掛かりそうです。こうした中で、マイナンバーカードの普及率をさらに上げるためには、現在政府が検討している新たな政策を整理し、実行するとともに、改めてマイナンバーカードに対する不安・懸念・疑問などを払拭できるよう、住民への丁寧な説明が重要になってきます。
総務省によると、2020年12月1日現在のマイナンバーカードの交付状況は、交付実施済み数が29,341,772枚で、人口に対する交付枚数率は23.1%(2020年1月1日時点の人口は127,138,033人)です。政府のスケジュールでは、2023年3月末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有することをめざしています。
なお、自治体のマイナンバーカードの申請窓口では、2020年9月時点で申請受付数と交付実施済み数との差が約420万枚となっており、現在は申請が急増中です。
マイナンバーカードの発行状況(2020年11月現在)
参考:「マイナンバーカードの普及等の取組について」(IT総合戦略本部 デジタル・ガバメント閣僚会議(第6回)
(資料1)、「マイナンバーカード交付状況について」(総務省)を元に作成
マイナンバーカードの申請受付数と交付状況
出典:「地方行政のデジタル化について」令和2年10月(総務省)
現在実施が予定されているマイナンバーカードの普及政策のうち、主なものはマイナポイントによる消費活性化策とマイナンバーカードの健康保険証としての利用に向けた取り組みです。マイナポイントによる消費活性化策の状況としては、マイナポイント申し込み者数(決済サービスを申し込んだ人の数)が2020年11月25日時点で約1,000万人です。また、厚生労働省の調査結果によれば、マイナンバーカードの健康保険証としての利用に向けた取り組み状況として、医療機関や薬局における顔認証付きカードリーダーの申し込み状況を見ると、政府が目標としている2021年3月の時点での導入率60%に対し、2020年12月6日時点で228,280施設中、42,722施設(18.7%)の申し込みとなっています。
現在、「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」ではさまざまな短期・中長期の施策が検討されています。
現在検討されている施策は以下のとおりです。
現在、2019年6月に決定した、「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの促進に関する方針」に沿って各取り組みが進められ、出張申請受付サービスなどを実施される自治体も増えています。マイナンバーカードの普及率を上げるためには、政府、および自治体からマイナンバーカードの取得の要請をするだけでなく、住民に対してマイナンバーカードに関するより丁寧な説明をすることが必要だと私は考えています。
具体的には、下記のような説明が有効だと考えています。
# | 施策 | 説明のポイント |
---|---|---|
1 | マイナンバーの必要性を伝える |
・自治体において、個人を名前、性別、生年月日、住所(基本4情報)で特定することが難しく、行政サービスが行き届かない一因となっていること ・マイナンバー制度は、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平・公正な社会を実現する社会基盤(インフラ)であること |
2 | マイナンバーやマイナンバーカードに対する不安・懸念・疑問を解消する |
・マイナンバーカードは、最高位の身分証明書であり、これからのデジタル社会においては、対面だけでなくオンラインでも本人確認ができるツールであること ・マイナンバーカードには、写真や基本4情報が記録されるが、よりプライバシー性の高い個人情報(所得情報、医療情報など)は記録されないこと ・マイナンバーカードを紛失したり、盗難にあった場合の再交付手続きは、24時間365日対応可能であること |
3 | マイナンバーカードを取得したいと思ってもらう |
・マイナポータルに一人1口座を任意で登録することで、緊急時の給付金や児童手当などの受け取りが迅速になること ・マイナンバーカードの更新や暗証番号の再設定が、コンビニなど、自治体の窓口以外でも可能になる予定であり、今後利便性が向上すること ・マイナポータルで行政手続きや、ワンストップサービスが提供されており、今後もマイナンバーカードを活用した有益なサービス提供が増えると想定されること |
また、マイナンバーカードの普及とマイナンバー関連のコンテンツを充実させることは、両輪で進めていく必要があります。
例えば、銀行での手続きにおいて、銀行が申請者本人の同意の上でマイナンバーカードの電子証明書に付与されているシリアル番号を使い、氏名や住所、生年月日、性別の基本4情報を地方公共団体情報システム機構(J-LIS)に直接照会できるようになったとします。そうすれば、住所変更や結婚などで氏名が変わった際でも口座名義の変更手続きが不要になりますし、銀行も窓口対応の負担が減り、銀行と住民の双方にとって利便性が向上します。このように、マイナンバー関連のコンテンツを拡充し、マイナンバーカードを取得していた方が便利だと実感いただくことで、マイナンバーの普及率も上がっていくのではないかと私は考えています。
マイナンバーカードの普及率が高くなれば、民間企業などでもユーザーのマイナンバーカードから得られた情報を活用し、サービスの向上や自社の業務改革に役立てることもできます。これにより、民間企業からのさまざまなマイナンバーカードの活用アイデアの提案が期待できます。
ぜひこの機会に、より効果的なマイナンバーカードの普及活動と、マイナンバーカードやマイナポイントを活用した自治体独自のサービスを検討してみませんか。
私たちも、マイナンバーカードや公的個人認証サービス(JPKI)を活用した住民向けのサービス、および自治体職員向けのサービスを積極的にご提案してまいります。
森重 福一
(株式会社 日立システムズ 公共・社会事業企画本部 公共事業企画部)
日立システムズに入社し前半は中央官庁のSEとして大規模プロジェクトを経験し、後半は、自治体のパッケージ開発部門で電子自治体や地域情報プラットフォーム対応に携わる。その後は、国や自治体関連のコンサル業務をメインに活動中。コンサルとしては、自治体クラウドやマイナンバー対応に携わり、個別案件の提案、講演会、勉強会、ユーザー会などを精力的に取り組み最新情報の共有、発信に努めています。
(2021年1月25日 公開)
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