読んでナットク!自治体ICT
執筆:森重 福一(株式会社 日立システムズ 公共・社会事業企画本部 公共事業企画部)
2020年12月25日に総務省は「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画(以下、自治体DX推進計画)」を策定・公表し、デジタル社会の構築に向けた取り組みを全自治体において着実に進めようとしています。各自治体においてはそのために全庁的・横断的な推進体制を整えて自治体DX推進計画(官民データ活用推進計画)を策定し早期着手することが求められています。
政府の「デジタル・ガバメント実行計画」における、デジタル社会構築に向けた各施策(自治体の情報システムの標準化・共通化など)を効果的に実行していくためには、政府が主導的に役割を果たしつつ、自治体全体として、足並みを揃えて取り組んでいく必要があります。このため総務省は、デジタル・ガバメント実行計画のうち、自治体が重点的に取り組むべき事項・内容を具体化するとともに、総務省および関係省庁による支援策などをとりまとめ、自治体DX推進計画として自治体に示しています。
自治体DX推進計画をご紹介する前に、デジタル化について再確認してみましょう。デジタル化には大きく分けてデジタイゼーション(Digitization)とデジタライゼーション(Digitalization)の二つがあります。デジタイゼーションは、デジタル技術の利用によりビジネス・プロセスを変換し効率化やコストの削減、付加価値を向上させることです。具体的には、紙の書類が電子書類に、本が電子書籍に、アナログ信号がデジタル信号になるなどの例があります。デジタライゼーションは、近年ガートナー社が提唱している言葉で、デジタル技術の利用によりビジネス・モデルを変換し新たな利益や価値を生み出す機会を創出することを言います。具体的には、自動車の所有がカーシェアリングに、ダウンロードがストリーミングに、物販がサブスクリプションになるなどの例があります。デジタイゼーションの先にデジタライゼーションがあり、さらにその先に人と組織を通しての変革の結果として新たなビジネスやサービスの仕組みが創出されます。このように、社会的な影響をもたらすまでになることがDXです。
では、自治体におけるDXとは具体的に何を指すのでしょうか?自治体DX推進計画では、住民に身近な行政を行う自治体(市区町村)の役割は極めて重要とされており、以下が求められています。
自治体DX推進計画は2021年1月から2026年3月までを対象期間としています。
重点取り組み事項として示されているのは、「自治体の情報システムの標準化・共通化」「マイナンバーカードの普及促進」「行政手続のオンライン化」「AI・RPAの利用推進」「テレワークの推進」「セキュリティ対策の徹底」の6項目です。
例えば、「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けた検討を踏まえ、2025年度末までに政府の策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行すること、住民がマイナンバーカードを用いて申請を行うことが想定される手続きについて、2022年度末までにマイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続きを可能にすることなどがあります。詳細は以下のとおりです。
自治体DX推進計画には、さまざまな政府の支援策が示されていますが、自治体DX推進計画に示されている取り組みを一定の期間内に実現するには、各自治体においても早期から全庁的・横断的な推進体制を整え、現行のシステムの調査や、スケジュール策定をはじめとして計画的な導入に向けた検討を行うことが求められます。
2021年夏を目途に総務省から「(仮称)自治体DX推進手順書」が提示される予定になっていますが、私なりに手順と留意事項について整理しました。
# | 手順 | 留意事項 |
---|---|---|
1 | 速やかに全庁的・横断的な推進体制を整える。 |
●自治体DX推進計画を全庁的に推進するための研修や勉強会などを開催する。 ●CIO補佐官などに積極的に外部の人材を活用する。 ●各部署に若手の推進リーダーを設置する。 |
2 | 自治体DX推進計画を策定する。 |
●自治体DX推進計画の各取り組みについて既存の官民データ活用推進計画に記載する。計画未策定団体においては新たに各取り組みも含めた官民データ活用推進計画を策定する手法を検討する。 ●現行システムの調査、標準化・共通化するためのスケジュールを策定する。 ●業務の抜本的な見直し(業務プロセスの見直し)のために現状を分析する(なお、標準化対象業務となっている17業務以外の見直しも必要と考える)。 ●標準仕様に基づいた様式や帳票などに関して、条例・規則などの見直しを検討する。 |
3 | 最新情報を取り込み「デジタル・ガバメント実行計画」などにおいて示された方針やKPIを踏まえ、自身の自治体における取り組み状況に応じたPDCAサイクルを回す。 |
【今後予定される最新情報】 ●デジタル庁の設置 ●「(仮称)Gov-Cloud」の活用に向けての検討情報 ●各種ガイドブックの提供
|
4 | 庁内のデジタル人材教育を推進する。 |
●政府のデジタル担当職員育成のための支援策を活用する(共創プラットフォーム、研修、デジタル庁出向など)。 ●有識者による継続的な研修を実施する。 |
繰り返しになりますが、自治体DX推進計画の策定は全庁的な推進体制を構築し、早期に着手することが重要となります。私たちも、自治体DX推進計画の策定支援に向けて情報提供やお手伝いを積極的にしてまいります。
森重 福一
(株式会社 日立システムズ 公共・社会事業企画本部 公共事業企画部)
日立システムズに入社し前半は中央官庁のSEとして大規模プロジェクトを経験し、後半は、自治体のパッケージ開発部門で電子自治体や地域情報プラットフォーム対応に携わる。その後は、国や自治体関連のコンサル業務をメインに活動中。コンサルとしては、自治体クラウドやマイナンバー対応に携わり、個別案件の提案、講演会、勉強会、ユーザー会などを精力的に取り組み最新情報の共有、発信に努めています。
(2021年2月22日 公開)
配信を希望される方へ
自治体ICTに関する事務局おすすめの記事をメールマガジンでお届けします。登録は無料です。