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執筆:森重 福一(株式会社 日立システムズ 公共・社会事業企画本部 公共事業企画部)

2021年2月9日に、政府は個人情報保護法などの改正案を閣議決定し国会に提出しました。改正案では、これまで政府や自治体によってバラバラだった個人情報を取り扱うルールを統一することによって、いわゆる「2000個問題」の解消を図り、医療・福祉、災害・防災やパンデミックの広域支援などで必要なデータの利活用・流通の促進を実現することをめざしています。そのためにも、改正案と自身の自治体の条例を比較して、個人情報の取り扱いルールにどれくらい差異があるのかを把握しておくことが重要です。

個人情報保護法の現状と課題

現状の個人情報保護法の体系は以下のとおりです(「図1:現状」を参照ください)。

図1:現状
[イメージ]図1:現状(現状の個人情報保護法の体系)
参考:「個人情報保護に関する法律・ガイドラインの体系イメージ」(個人情報保護委員会)を加工して作成

情報を取り扱う主体ごとに個人情報保護法は異なり、政府の法律としては三つあります。

  1. 民間事業者に適用される個人情報保護法
  2. 政府の機関に適用される行政機関個人情報保護法
  3. 独立行政法人に適用される独立行政法人等個人情報保護法

なお、自治体については、各自治体で個人情報保護条例を定めています(「図1:現状」の赤枠部分)。

個人情報保護条例については、各自治体が独自の個人情報保護条例を定めている状態で、個人情報の定義・権限・ルールなどがバラバラです。これがいわゆる「2000個問題」と呼ばれているもので、以前から問題となっています。

実例として、データ提供に関する問題が起きています。例えば児童相談所では、転居する児童の情報を転居先の相談所に迅速に提供できなかったために虐待への対応が遅れたケースがあります。また、医療機関では、患者さんが転院するときに、現在入院している病院から転院先へカルテのデータを提供することが難しい場合もあります。また、医療・福祉、災害・防災やパンデミックの広域支援のためのデータ提供などにも問題があると言われています。

個人情報保護法はどう変わるか

上記の課題を解決するために、個人情報保護制度の見直しも含む「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」が2021年2月9日に閣議決定され、今国会(第204回常会)に提案されて審議が始まっています。

個人情報保護制度の主な見直し点は以下のとおりです(イメージは、「図2:今後(法律改正後)」を参照ください)。

  1. 個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、独立行政法人等個人情報保護法の3本の法律を1本の法律に統合するとともに、自治体の個人情報保護制度についても統合後の法律において全国的な共通ルールを規定する。
  2. 全体の所管を個人情報保護委員会に一元化する。
  3. 「必要最小限度の独自の保護措置」を許容し条例で対応する。ただし、条例の上乗せ・横出しは必要最小限にしないと個人データ流通の円滑化を妨げてしまうため、具体的には性的少数者(LGBTなど)や生活保護受給に関する情報などを保護強化することを想定している。
  4. 医療分野・学術分野の規制を統一するため、国公立の病院、大学などには原則として民間の病院、大学などと同等の規律を適用する。
  5. 個人情報の定義などを政府・民間・地方で統一するとともに、行政機関などでの匿名加工情報の取り扱いに関する規律を明確化する。
  6. 学術研究分野を含めたGDPR(EU一般データ保護規則)の十分性認定への対応をめざし、学術研究に係る適用除外規定について、一律の適用除外ではなく、義務ごとの例外規定として精緻化する。

特に自治体に影響するのが、項番5の匿名加工情報の取り扱いです。匿名加工情報の取り扱いについては、自治体が保有するデータを活用する上で、非常に重要なポイントとなります。

図2:今後(法律改正後)
[イメージ]図2:今後(法律改正後の個人情報保護法の体系)
参考:「個人情報保護に関する法律・ガイドラインの体系イメージ」(個人情報保護委員会)を加工して作成

個人情報を守りながら自治体が保有するデータを活用するために

総務省によると、自治体が保有するデータは以下のとおりです。

[イメージ]自治体が保有するデータ
参考:「自治体CIO育成地域研修教材(平成29年度改訂版)「個人情報利活用のこれから」(総務省)を加工して作成

自治体が保有するデータを利活用する場合の課題と対応策などについて以下に整理してみました。

課題 対応策など
1 オープンデータ オープンデータに取り組んでいる自治体の数が半数程度にとどまっている
※2020年12月9日時点の取り組み率:約51%(915/1788自治体)
※政令指定都市が中心となって推進している地区は100%達成しているが、小規模自治体の取り組み率が低い(人口5万以上20万未満:68%、人口5万未満:38%)
● データが価値創造の源泉であることについて認識を共有する。
● 公開するデータの量だけではなく、データの質の向上も図る。
● 自治体向けのガイドラインや手引書、「推奨データセット」なども参考にしながら、利用者ニーズに即したオープンデータ化を積極的に進める。
2 データセットの共通化と活用を進める必要がある データの様式の統一化などを図る。ただし、全自治体で共通の部分と自治体で独自性のあるデータの両方を扱えるようにすること。
3 カタログサイトの在り方を検討する必要がある できるだけ広域で利用できるカタログサイトの構築をめざす(サイトの複製を保持する仕組みを検討する必要あり)
4 クラウド上にある自治体基幹業務のデータの庁内利活用が進んでいない 行政内部でのデータ活用を推進する。基幹システムと連携した分析ツールなどを積極的に活用する。
5 データの流通を促進する ● 現状の条例との差異を事前に調査・研究する。
● 自治体から個人情報の提供を受けて非識別加工情報(法律改正後は匿名加工情報)を作成する仕組みを見直しデータの流通を促進する。
6 データを活用して地域の課題解決を図りたい EBPM(Evidence Based Policy Making)により行政の効率化・高度化を図る。
7 データを活用して新たな産業を育成したい 行政保有データを原則オープン化し、オープンデータや匿名加工情報を活用した民間のデジタルビジネスなど、新たな価値を創出するベンチャーの出現を促す。

コロナ禍で行政機関や自治体のデジタル化が急がれている中で、今回の個人情報保護法の改正などを通じて、個人情報を守りながらデータの利活用・流通を促進する施策が益々求められるようになるでしょう。

執筆者プロフィール

[画像]森重 福一

森重 福一
(株式会社 日立システムズ 公共・社会事業企画本部 公共事業企画部)
日立システムズに入社し前半は中央官庁のSEとして大規模プロジェクトを経験し、後半は、自治体のパッケージ開発部門で電子自治体や地域情報プラットフォーム対応に携わる。その後は、国や自治体関連のコンサル業務をメインに活動中。コンサルとしては、自治体クラウドやマイナンバー対応に携わり、個別案件の提案、講演会、勉強会、ユーザー会などを精力的に取り組み最新情報の共有、発信に努めています。

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