読んでナットク!自治体ICT
執筆:森重 福一(自治体ICTコンサルタント)
少子高齢化や人口減少、メールやSNSの台頭などにより、郵便局の利用者や取り扱い件数は減少傾向です。その一方で、地方においては身近な公共機関として存在感を増しており、行政サービスを補完する役割が期待されています。
今回は、自治体と郵便局との連携状況や、さらなる連携拡大のイメージについて整理しました。
少子高齢化や人口減少、メールやSNSの台頭などを理由に、郵便局の利用者や取り扱い件数は減少傾向で、今後もさらに減少が加速する見込みです。しかしながら、郵便局の合計局数に大きな変化はありません。また、過疎地域における郵便局数も維持しています。
特に地方においては、地方銀行や農協などの地域金融機関、役場の支所が撤退する自治体も少なくありません。このような状況下で、地域に根差した郵便局は身近な公的機関、金融機関としての存在感を高め、住民からの信用、信頼を集める対象となっています。
郵便局が地方において存在感を高める一方、自治体では少子高齢化や人口減少などの社会課題に備えて、デジタル化を推進したり、業務のアウトソーシングをしたりしています。そのような中で注目されているのが、自治体内に点在している郵便局との連携です。
現在の自治体と郵便局の連携状況を確認してみましょう。以下は、日本郵便が公表している自治体と郵便局との協定の締結状況です。
また、地域の利便性の向上およびマイナンバーカードの普及促進のため、2017年10月から郵便局にマルチコピー機(情報キオスク端末)の設置を開始し、その後も順次、設置郵便局を拡大しています。これにより、住民がマイナンバーカードか住民基本台帳カードを使用することで、郵便局のマルチコピー機から自治体が発行する各種証明書を取得できるようになりました。
なお、行政サービスにおいては、2019年7月から郵便局において自治体事務の包括受託が開始され、郵便局が公的証明書の交付などの行政事務や窓口事務を行っています。
自治体が郵便局へ委託できる業務のさらなる拡大(規制緩和)やコロナ禍における業務分担の見直しについて、2021年通常国会で審議されています。
# | 法案 | 詳細 | 担当府省庁 |
---|---|---|---|
1 |
|
転出届の受付および転出証明書の引き渡し、印鑑登録の廃止申請の受付事務について、自治体が指定する郵便局で取り扱うことを可能とする。 | 内閣府 地方分権改革推進室 |
2 |
|
|
内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室 |
参考:地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣府)、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案(内閣官房)
また、総務省においても2019年から郵便局活性化推進事業を行っています。具体的には、全国に存在する郵便局と自治体などの連携により、地域の諸課題解決のための実証を行い、モデル事業として全国に普及、展開する事業です。
そのほかにも、政府や日本郵政主催の研究会で自治体と郵便局の連携についてヒアリングなどを実施し、今後も自治体のニーズに応じ、さらなる連携拡大に向けた取り組みを推進しています。
これらを踏まえて、最後に自治体と郵便局のさらなる連携拡大のイメージを私なりに整理してみました。
このように、郵便局をはじめとした鉄道やコンビニなどの住民の生活に不可欠なインフラとも連携を進めることにより、自治体だけでなく地域全体で地域の課題解決や住民の暮らしやすさの向上に取り組んでいくことが必要だと考えています。
自治体と郵便局は、住民がその地域で生活していくために必要な場です。今後も双方の連携を深めつつ、地域に寄り添った施策を検討、実施されることを期待しています。
森重 福一(自治体ICTコンサルタント)
株式会社 日立システムズに入社し、前半は中央官庁のSEとして大規模プロジェクトを経験、後半は自治体のパッケージ開発部門で電子自治体や地域情報プラットフォーム対応に携わる。日立システムズ退社後も、国や自治体関連のコンサルティング業務をメインに活動中。自治体クラウドやマイナンバー対応に携わり、個別案件の提案、講演会、勉強会、ユーザー会などを精力的に取り組み最新情報の共有、発信に努めています。
(2021年6月21日 公開)
配信を希望される方へ
自治体ICTに関する事務局おすすめの記事をメールマガジンでお届けします。登録は無料です。