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執筆:森重 福一(自治体ICTコンサルタント)

政府は、自治体に共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境であるGov-Cloud(ガバメントクラウド)の整備を進め、運用に向けて準備をしています。今回は、自治体の業務標準化とGov-Cloudの推進に向けて、これまでの経緯や課題も含め、早期に着手したほうがよい作業項目や留意事項について改めて整理しました。

自治体の業務標準化施策の転換経緯

自治体の業務標準化の端緒は、2040年に65歳以上の高齢者の人口がピークになり、約4,000万人に達するとされる「2040年問題」です。総務省は「自治体戦略2040構想」の報告書の中で、人口縮減時代のパラダイムへの転換に向けて、自治体においては「スマート自治体への転換」をめざすことが重要である、としています。その流れで、政府が業務システムの標準仕様を作成し、自治体が標準仕様に準拠したシステムを選択・利用できるように推進していました。

しかし、システムの維持管理や制度改正時の改修などで自治体が個別対応を余儀なくされるため、自治体の負担が大きく、全国へ普及させることが難しいなどの課題が生まれていました。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって個別対応の難しさがさらに顕在化したことを受けて、横串で社会全体のデジタル化をめざす「業務の標準化+Gov-Cloud」に方向転換し始めています。

Gov-Cloudを活用することで、自治体はハードウェアやソフトウェアを所有する必要がなくなり、調達などの手続きの負担を軽減できます。また、政府がクラウド提供業者と包括契約することで大幅にコストを低減でき、セキュリティやBCPなどの観点からもメリットがあります。これにより、自治体の人的・財政的な負担の軽減を図り、地域の実情に即した住民サービスの向上に注力できるようにする「自治体DX」の実現にも貢献します。

Gov-Cloudの課題と方向性

Gov-Cloudの課題と方向性などについて、現時点でわかっていることを私なりに整理してみました。

項番 項目 説明
1 Gov-Cloudの方式 Gov-Cloud上の基幹業務などのアプリケーションは、複数の事業者が構築します。自治体がオンライン上で基幹業務などを実施する場合は、それらの中から要件に合ったアプリケーションを選択できるようになります。
2 Gov-CloudとISMAP*の関係 現状、政府機関はISMAPの認定を受けたクラウドサービスの中から要件に合ったものを調達するよう定められていますが、2022年4月1日から独立行政法人および指定法人も同様に制約が設けられる予定です。今後の方向性として、自治体も調達の際に制約が設けられることが想定されます。
3 Gov-Cloudと自治体クラウド 自治体クラウド事業が「業務の標準化+Gov-Cloud」に本格的に転換されるのか、正式な発表がまだない状態です。
ただし、政府の重点計画では自治体クラウドのKPIが変更されていたり、総務省から自治体クラウド導入に係る特別交付税措置の廃止と経過措置について連絡が出たりするなど、転換に向けて動き出しているように見えます。
*
Information system Security Management and Assessment Program

これらの課題は、Gov-Cloudの詳細が明確になれば解決していくと思われます。

Gov-Cloudの先行事業とは

Gov-Cloudの先行事業とは、デジタル庁が調達するGov-Cloudを活用し、標準準拠システムを市町村が安心して利用できるようにするため、Gov-Cloudへの移行に係る課題の検証を行う事業のことです。2021年度から2022年度にかけて実施されるもので、2021年7月5日にGov-Cloudの先行事業一次計画の提出が締め切られました。

Gov-Cloudの先行事業の目的は、クラウドや回線が安心して利用できることの検証、移行方法についての検証、投資対効果の検証の3つです。

早期作業着手の勧め

自治体の業務標準化とGov-Cloudの推進に向けて、全庁的・横断的な推進体制を整え、全体計画の立案に早期着手することが求められています。また、2021年7月7日に総務省が「自治体DX推進手順書」を公表しました。これらの手順書は、今後も先行事業などをとおして改定されるようです。中でも、別冊の「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第1.0版】」を特に活用されることをお勧めします。

標準準拠システムへの移行の目標時期は2025年度とされており、目標時期までの作業を平準化するため、実施可能なものから取り組むことが何よりも重要です。そこで、「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第1.0版】」の中から、早期着手をお勧めする作業と留意事項について抜粋しました。

項番 項目 説明
1 推進体制の立ち上げ 標準化・共通化の取り組みの第一歩であることから、早期に実施することが望ましい項目です。
2 現行システムの概要調査 標準化・共通化の取り組みの第一歩であることから、早期に実施することが望ましい項目です。
3 標準仕様との比較分析 現行の条例や規則などでどのように規定しているかを事前に調査し、標準仕様との差異を把握します。
まずは、2021年夏に作成される第1グループ(固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、就学、介護保険および障がい者福祉)の標準仕様書に関して現行業務とのFit&Gap分析を行うことを想定しています。また、第2グループ(選挙人名簿管理、国民年金、国民健康保険、後期高齢者医療、生活保護、健康管理、児童手当、児童扶養手当および子ども・子育て支援)の標準仕様書は2022年夏を目途に取りまとめることとされていますが、標準仕様の検討状況に応じてWebサイトなどで適時適切に情報提供が行われることから、2022年夏を待つことなく、随時これらの情報を元に確認・分析を進めることをお勧めします。
また、システム部分の仕様だけでなく、全体の運用についても見直しをするよい機会になると思います。
4 移行計画作成 Gov-Cloudに関する検討状況などを踏まえて詳細化・変更する必要がありますが、第1グループに関する移行時期や予算計上時期などについては早期に検討する必要があります。
5 ベンダに対する情報提供(RFI)資料の作成 ベンダから可能な限り早く情報収集を行うために、早期の実施をお勧めします。
6 RFIの実施 ベンダから可能な限り早く情報収集を行うために、早期の実施をお勧めします。
7 文字情報基盤文字への対応 移行にともなう文字情報基盤文字への対応については早期に実施可能な作業であるため、移行内容・作業内容確認および同定基準作成の先行着手をお勧めします。

参考:自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第1.0版】(総務省)

今後もGov-Cloudについては政府から提供される情報や先行事業の状況などのキャッチアップがますます重要となります。私たちも、自治体の業務標準化とGov-Cloud支援に向けて情報提供やお手伝いを積極的にしていきたいと考えております。

執筆者プロフィール

[画像]森重 福一

森重 福一(自治体ICTコンサルタント)
株式会社 日立システムズに入社し、前半は中央官庁のSEとして大規模プロジェクトを経験、後半は自治体のパッケージ開発部門で電子自治体や地域情報プラットフォーム対応に携わる。日立システムズ退社後も、国や自治体関連のコンサルティング業務をメインに活動中。自治体クラウドやマイナンバー対応に携わり、個別案件の提案、講演会、勉強会、ユーザー会などを精力的に取り組み最新情報の共有、発信に努めています。

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