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超高齢社会を迎え、医療・介護・健康分野においては、医療費・介護費の増大や医療資源の偏在といった課題を抱えています。
総務省では、これら課題の解決に加えて、健康寿命の延伸や医療製品・サービスの強化に向けて、以下の取り組みを推進しており、この中でAI利活用が推進されています。
具体的な取り組みとして、日立が開発したAIの活用事例をご紹介します。
神戸大学と日立は、神戸市が構築したヘルスケアデータ連携システム(*)を活用した取り組みとして、AIによる要介護リスクの解析研究を開始しました。
本研究は神戸大学が主体となり、日立が開発した独自の説明可能なAI技術を活用することで要介護リスク予測のブラックボックス化(解析根拠が不明)の解消をめざし、神戸市民38万人の健康・医療ビッグデータから、住民一人ひとりに対する要介護リスクの予測および予測根拠を提示する方法を開発します。研究成果の要介護リスク個別予測モデルは神戸大学から神戸市に提供され、神戸市の保健・介護政策づくりに活用されることが期待されます。
日立は、栃木県と栃木県国民健康保険団体連合会に、AIを活用した保健事業支援サービスを提供しました。
栃木県では、2017年度より県独自の「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」に取り組んでいます。これまでは、市町が県から提供された県プログラムに基づく保健指導の対象者リストをベースに、限られた人的資源の中、より糖尿病リスクの高い被保険者に保健指導を行うため、年齢・性別・既往歴などの情報から手作業でさらに対象者を絞り込んでいました。日立は糖尿病の受診や入院の発生確率などをAIで分析し、糖尿病の重症化予測に特化した栃木県独自の予測モデルを構築しました。これにより、保健指導対象者の糖尿病リスク度が付与されたリストを提供することが可能となり、市町の負担が大幅に軽減されます。
この予測モデルを活用することで、空腹時血糖をはじめとした血液検査数値や過去の病歴など健康状態にかかわる項目と糖尿病重症化リスクを結び付け、先の5年間において、糖尿病が現状から重症化し、受診や入院が必要になる確率を算出することができます。また、このサービスでは、被保険者単位で糖尿病既住歴の有無などから将来の発症リスクを3段階で判定し、合併症の発症や人工透析が必要となる確率を予測・可視化することが可能です。これらの指標を参考に、保険者が緊急度に応じた効果的な受診勧奨や保健指導の実施ができ、さらには重症化予防が期待できます。
社会課題となっている医療費や介護費の抑制には、生活習慣病の予防が欠かせないとされています。 地域において蓄積した医療データや、リアルタイムに取得する健康データなどを、AI技術を用いたリスク予測と組み合わせて活用することで、生活習慣病の早期発見や要介護リスクの予測、効果的な保健指導の実現につながると考えられ、地域の健康寿命延伸に大きく貢献することが期待できます。
(2022年3月7日 公開)
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