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2020年12月に「自治体DX推進計画」が、2021年7月に「自治体DX推進手順書」が策定されました。
「自治体DX推進手順書」には、全庁横断的な推進体制の構築を進めるとともに、各部門の役割に見合ったデジタル人材が配置されるように、「デジタル人材の確保・育成」を図ることが記載されています。今回は、この「デジタル人材の確保・育成」についての現状と事例をご紹介します。
まずは、デジタル人材の確保についてです。
総務省の調査によると、市区町村における外部デジタル人材の活用に係る検討状況は、1,741団体中、238団体(13.7%)が「活用する方向で検討中」、1,064団体(61.1%)が「未定」、439団体(25.2%)が「活用する予定なし」と回答しています。
さらに、「活用する方向で検討中」、または「未定」と回答した1,302団体に活用に当たっての課題を調査したところ、1番多かったのは、「外部デジタル人材に求める役割やスキルを整理・明確にすることができない」、という回答でした。
これを受け総務省は、活用に当たっての課題を解消するために、自治体DXに携わる外部人材が備えておくことが望ましいスキルや経験を類型化した「スキル標準」を策定しました。以下のように、自治体DX推進に必要な人物像を分類して、それぞれの役割やスキルが記載されています。
「自治体DX推進手順書」にも外部人材の活用が明記されており、例えば、福島県磐梯町では、最高デジタル責任者(CDO)、CDO補佐官2名(ICT・セキュリティ担当、デザイン担当)、地域おこし協力隊(PR担当)、地域活性化起業人(広報担当)の合計5名の外部デジタル人材を中心に、以下のような取り組みが推進されています。
また、「小規模自治体では、知りえなかった新たな視点、専門的知識と人脈を得ることができた」という活用効果があったとされています。
続いて、デジタル人材の育成についてです。
先述の調査では、都道府県では全団体が、市区町村では1,069団体(61.4%)が、自治体DX・情報化を推進するための職員育成について、何らかの取り組みを実施していると回答しました。その中でも、取り組みの内容として多く挙げられていたのは、「DX・情報化に関する研修」の実施でした。
一口に「DX・情報化に関する研修」と言っても、対象者や内容は多岐にわたるため、2022年4月28日付けで総務省から各自治体に情報担当職員などに対する各種研修について情報提供されています。実施時期、対象者、内容が一覧できるようになっているので、その中から必要に応じて受講することができます。
職員向けのデータ利活用研修が実施されている茨城県つくば市では、データに基づいて物事を分析し、政策検討を行うなど、正しくデータを活用できる人材の育成を目的としています。また、この研修は地方公務員法上の研修計画に基づく基本研修と位置付けられ、各職務において1度は受講必須の研修とされています。
なお、総務省が提示する職員育成の取り組みの方向性は以下のとおりです。今後の情報提供にも注目していきます。
参考:自治体DX推進のための職員育成の取組(総務省)をもとに作成
最後にDX人材について、もう1つの流れをご紹介します。
デジタル人材の需要は官民ともに逼迫しているため、一部の自治体では、高度デジタル人材を都道府県や中心市で確保し、都道府県内や複数市町村間でシェアする動きが出てきています。愛媛県では「チーム愛媛」高度デジタル人材シェアリング事業として、基礎自治体のDXを推進できる人材を確保し、県と市町がシェアする仕組みを構築する取り組みが推進されています。
自治体においては、行政サービスについて、デジタル技術やデータ活用により、住民の利便性を向上させることと、業務効率化により、人的資源を行政サービスのさらなる向上につなげていくことが求められています。デジタル人材の育成や外部人材活用は、これらのニーズに応えるための取り組みとして寄与しますので、今後も先進事例や参考事例に注目していきます。
(2022年8月8日 公開)
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