読んでナットク!自治体ICT
インターネット上につくられた仮想空間「メタバース」。「5GなどIoT技術の進展」、「コロナ禍をきっかけにしたオンライン上のコミュニケーションの増加」といった背景もあり、COVID-19の流行以降、「メタバース」が改めて注目されています。現時点では、エンタメ・ゲーム・ファッションといった分野での活用が進んでいますが、移動・まちづくり・行政・公共・教育などにおいてもメタバースの活用が検討され始めています。
メタバースとは、3DやVRといった技術を使って、インターネット上に仮想的に構築された世界のことです。メタバース上では、自分の分身となるアバターを操作し、現実の世界と同じように他者と交流できます。別の場所にいる人と、同じ場所にいるような感覚で交流できるため、次世代のコミュニケーション手段として注目されています。また、オンライン上では、アバターや洋服、靴、アート作品、土地などがNFT(*1)化され、売買も可能であるため、新しいビジネスへの活用にも注目が集まっています。
現時点では、エンタメ・ゲーム・ファッションといった分野での活用が進んでいますが、今後はさまざまな分野への活用が期待されています。自治体においても、「自治体DX」の一環として、メタバースの利活用に関する調査や研究への着手や、実際にメタバースを利活用する取り組みが見られるようになってきました。
例えば、福井県越前市では、DX推進活動に積極的に取り組んでおり、自治体DXの取り組みとあわせて地域社会のデジタル化を推進しています。2021年度から始まった「デジタルツインえちぜん」では、越前市のデジタルツイン(*2)を製作しています。市民が携帯やタブレットで撮影した街の写真から3Dデータを作成して、越前市の街並みをメタバース上のバーチャル空間に創る取り組みで、最終的にはオープンデータとして公開しようとしています。
東京都町田市では、アバターを使い、メタバース上のバーチャル市役所を舞台とした職員採用PR動画を作成して、YouTubeに公開しています。手軽に扱える最先端のアプリケーションを組み合わせて、職員が自前で安価かつスピーディーに実装したとのことです。今後は、だれでもいつでもメタバースを体験できる市民向けWebサイトや、メタバース上でコミュニケーションを実践する市民参加型イベントの開催などを予定しているとのことです。
また、総務省においては、メタバースなどの利活用が急速に進展しつつあることを踏まえて、「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」を開催しています。研究会では、メタバースなど仮想空間の利活用に関して、さまざまなユースケースを念頭に置きつつ、情報通信行政に係る課題を整理することを目的にしており、以下のスケジュールで議論を進めていく予定です。
まちづくりにおけるメタバース活用として、国土交通省の「Project PLATEAU」が2020年度よりスタートしています。
「Project PLATEAU」は、フィジカル空間(現実世界)の都市をサイバー空間(仮想世界)に再現する3D都市モデルを整備し、これを活用した都市計画・まちづくり、防災、都市サービス創出などの実現をめざす「まちづくりのDX」の取り組みで、日立も参画しています。
これまでに、全国56都市の3D都市モデルがオープンデータ化されました。公開されている3D都市モデルを活用することで、例えば、浸水想定区域図を3D都市モデルに重ねて、避難場所を検討するなど、防災政策の高度化が図れます。ほかにも、都市計画立案の高度化や、都市活動のシミュレーション、分析などが可能とされています。
出典:まちづくりのDX(Urban Digital Transformation)事業 Project PLATEAUについて(国土交通省)
また、2022年には「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」が創設されました。これは、全国の自治体における3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進するための補助制度です。以下、全国37自治体、約60都市において3D都市モデルが整備され、さまざまなテーマのユースケースが社会実装されていく予定です。
メタバースは、さまざまな分野での活用が期待される一方で、一般的には、所有権、肖像権、著作権などをどうするのか?といった法律に関する課題があるとされています。自治体が活用する上で何が課題となるかということは、先述した「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」で整理されていくと思われますので、引き続きその動向に注目したいと思います。
(2022年10月11日 公開)
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