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デジタル庁は、2023年の通常国会に向けて「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下、マイナンバー法*1)」の改正案について検討を進めています。今回は、改正案の概要と自治体業務に関連するものをピックアップしてご紹介します。
*1 「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の略称については、ほかに「番号法」、「個人番号法」という略称がありますが、この記事ではデジタル庁の資料にも記載があり、ニュースなどでよく用いられている「マイナンバー法」で統一しています。
今回の改正は、2022年6月に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」で示された施策を実現するために、マイナンバー法の一部改正を行うものです。
改正案では、国民の利便性を高める観点から、従来のマイナンバーを利用できる事務を拡大するための方針が示されています。具体的には、「マイナンバーの利用範囲の拡大」、「より迅速な情報連携に向けた措置」、「公金受取口座の登録促進」、「マイナンバーカードの在外公館交付」、「マイナンバーカード券面の見直し」といったそれぞれの方策と、改正案によって何がどう変わるかが示されています。
この改正の背景には、コロナ禍を経て、社会における抜本的なデジタル化の必要性や、マイナンバー制度における課題が明らかになったことなどがあります。
現在、マイナンバーの利用範囲は、税・社会保障・災害対策に限られていますが、改正案では、以下の事務において必要な限度でマイナンバーを利用できるようにすることで、申請や届出に必要な行政機関発行の証明書類の省略が可能になると想定されています。
例えば、国家資格や各種免許などの管理は、各種届出において窓口や郵送での手続きが必要となることや、紙面での処理が行われていることから、資格保有者や行政機関の負担となっています。マイナンバーを活用してオンラインでの申請とすることで、戸籍謄(抄)本や住民票の写しの添付を省略するなどの利便性向上が見込めるとされています。すでに、2021年度の改正で医師や税理士などの国家資格についてはマイナンバーが利用できるようになっていますが、今後利用できるようになる国家資格の具体例は以下のとおりです。
今回、法令の規定が見直されたもののうち、自治体の事務に関するものが、「より迅速な情報連携に向けた措置」です。ポイントは、法別表第一に規定されている事務に準ずる事務(*2)であれば、マイナンバーの利用を可能とし、迅速な情報連携を可能にするという方針が示されていることです。
*2 準ずる事務とは、法定されている事務と趣旨や目的が同一であり、内容や作用の面で基本的に同じである事務を想定。
現行では、情報連携できる事務に類似しつつも、マイナンバー法で規定されていない事務について、新規に情報連携する際には、その都度法改正が必要です。その後でシステムを改修するとなると、法改正に約1年、システム改修に約1年と最短でも2年を要することになり、迅速な情報連携が困難という点で課題となっていました。これからは、「新たに追加されるマイナンバー利用事務や情報連携の状況について、事後監視のあり方についても検討が必要」としつつ、以下が可能になるとされています。
政府はマイナンバーの利活用の促進を図る中で、自治体の事務についても、迅速な情報連携を可能にして添付書類をなくし、国民にとっても利便性の高いデジタル社会を実現していこうとしています。政府は今後も交通系ICカードと連携した料金割引サービスの全国展開、健康保険証との一体化など、さまざまな普及施策を打ち出していますので、引き続き、その動向に注目していきたいと思います。
(2023年2月6日 公開)
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