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日本は少子高齢化、相次ぐ災害、都市インフラの老朽化などの社会課題に直面しています。加えて、新型コロナウイルス感染症の影響により市民の生活スタイル・価値観が大きく変化しており、地域のあり方についても改めて考える局面に差し掛かってきています。政府はAIやIoTなどの技術をまちづくりに取り入れて、市民生活の質や都市活動の効率性などの向上を図るスマートシティの実装化を加速させようとしています。
今回は、スマートシティの動向や、先行プロジェクトで得た知見などをご紹介します。
かつて、スマートシティといえば、省エネルギー化や効率化など、特定の分野を対象とした取り組みが多かったのですが、昨今では、「環境」、「エネルギー」、「交通」、「通信」、「教育」、「医療・健康」など、複数の分野に幅広く取り組む内容となっていて、AIやIoTなどの技術をまちづくりに取り入れ、市民生活の質や都市活動の効率性などの向上を図ることをめざしています。
スマートシティの取り組みを官民連携で加速するため、2019年8月に、企業、大学・研究機関、自治体、関係府省などを会員とする「スマートシティ官民連携プラットフォーム」が設立されました。現在は、この枠組みのもと、各地域においてスマートシティの実装が進められています。
また、スマートシティへの取り組みをこれから開始しようとする自治体や公民連携の協議会などに向けて、「スマートシティガイドブック」が発刊されています(2021年1月公開、4月更新)。このガイドブックは、スマートシティの意義・必要性、導入効果、進め方などを、先行事例を踏まえつつ解説する内容となっています。
一方、スマートシティの社会実装に向けた先行的な取り組みとしては、国土交通省の「スマートシティモデルプロジェクト」があります。こちらは、各地域のスマートシティの実証実験を資金面、ノウハウ面から支援する取り組みです。
「スマートシティモデルプロジェクト」は、2019年度より始まっており、これまでの取り組みによって多くの知見が得られました。2022年3月に、実証段階の計画・実証実施時に留意すべき事項や、スマートシティを進める上で重要とされている推進体制、費用負担、市民参画についてとりまとめた知見集が公開されました。
例えば、実証の初期で留意すべき事項として、技術の確立や活用のみを対象とした検証となっていないかに注意し、目的を常に意識し、実証に取り組むことを挙げています。実証テーマの選定についても、地域が必要と感じている身近なテーマを選定し、地域のスマートシティに対する理解を深めたうえで、地域の理解醸成を踏まえて他テーマへの拡大や他地域における横展開などの段階的な実装を計画するとよいとされています。
出典:スマートシティモデルプロジェクトからの知見集ー概要版ー(国土交通省)
また、スマートシティを実装するためには、資金確保やコストの低減が必要です。多様な施策・分野や都市間で連携し効率化を図ることが重要ですが、その具体的手法として以下が示されています。
なお、これらの知見は先述した「スマートシティガイドブック」にも反映されます(2023年度に改訂予定)。スマートシティの取り組みを考える際に、ガイドブックと合わせて参考にされてみてはいかがでしょうか。
2022年度は、スマートシティモデルプロジェクトの知見を各地へ周知するとともに、スマートシティの高度化と全国横展開に向けて以下の取り組みが予定されています。
出典:スマートシティモデル事業等推進有識者委員会 第2回 配付資料 資料3:令和4年度のスマートシティモデルプロジェクトに関する取組み(案)(国土交通省)
今、政府は誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化をめざしてさまざまな取り組みを実施しています。2021年に公表されたデジタル田園都市国家構想においても、主な関連施策案の中に「スマートシティの社会実装の加速」が含まれています。デジタル化を進めて地域活性化をめざすスマートシティの実装は、今後さらに進展していくと思われます。
(2022年5月9日 公開)
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