自治体では、労働人口の減少にともなう人手不足への対応が課題となる中、業務の効率化や省力化が求められています。
こうした背景から、生成AIの活用も広がりつつありますが、その進め方については模索が続いています。
今回は、総務省の調査結果と日立の取り組みをもとに、自治体における生成AI活用の動向を整理します。
総務省の「自治体における生成AI導入状況(令和7年度)」によると、生成AIの導入(実証を含む)は、都道府県で87.2%、指定都市で90.0%と、一定規模以上の自治体では広く取り組みが進んでいます。
一方で、市区町村では29.9%にとどまり、導入の進み具合には差があることが分かります。
ただし、実証や導入検討を含めると、多くの自治体が何らかの形で生成AIに着手している状況にあり、裾野は広がりつつあります。
また、生成AIを導入(実証や導入検討を含む)している自治体の活用事例としては、あいさつ文やメールの作成、議事録の要約、企画書案の作成といった、日常的な事務作業における利用が中心となっています。
生成AIの導入効果としては、人口規模が5.1万人の自治体では、「文章作成業務において、1か月あたり190時間かかっていたものが、1か月あたり51時間に削減(73%削減)」、人口規模が9.4万人の自治体では、「生成AIを活用してマクロコードを自動生成した結果、累計約4,250時間の業務削減が見込まれている」など、一定の成果があがっています。
一方で、導入の課題としては、「AI生成物の正確性への懸念がある」「取り組むための人材がいない又は不足している」「要機密情報流出の懸念がある」などが挙げられています。
前述したように、自治体での生成AIの活用は、文書作成などの個別業務にとどまっているのが現状です。
また、調査結果では、「取り組むための人材が不足している」「導入効果が不明」「どのような業務や分野で活用できるかが不明」といった声も挙がっています。
こうした中で、「業務全体への展開はハードルが高い」と感じておられる自治体も多いのではないでしょうか。
そこで、業務プロセス全体に踏み込んだ生成AI活用の一例として、大阪市と日立の実証事例をご紹介します。
本取り組みでは、通勤届の申請・審査業務を対象に、AIエージェント(生成AIを活用し、業務プロセスの中で自律的に処理を支援する仕組み)を活用した実証が行われました(*1)。
その結果、業務時間を最大約40%短縮できる可能性が確認されています(*2)。
特徴は、文書作成などの単独業務ではなく、申請から審査に至る一連の業務プロセスを対象としている点です。
具体的には、申請時の入力ナビゲートや内容チェック、審査における判断支援、計算処理など、複数の工程を横断して支援する形で活用されています。
このような取り組みにより、文書作成などチャット型の生成AIによる個々の作業の効率化にとどまらず、通勤届の申請から審査に至る業務プロセス全体にAIエージェントを組み込むことで、業務の流れそのもの全体の見直しにつながる可能性が示されています。
また、大阪市では、こうした実証結果を踏まえ、今後の展開も視野に入れた検討が進められています。
自治体における生成AI活用は、いま一つの節目を迎えています。
個別業務の効率化から、業務全体の見直しへと視点が移りつつある中で、各自治体の業務特性に応じた活用の進め方が重要になってきています。
こうした取り組みを進めるにあたっては、小さく試しながら効果を見極め、段階的に展開していくことも一つの考え方です。
日立では、課題整理からPoC、本格展開まで、フェーズに応じた支援メニューをご用意していますので、お気軽にお声がけください。
(2026年7月6日 公開)
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