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執筆:森重 福一(自治体ICTコンサルタント)

2020年10月に「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」の有識者により提言された「国・地方の情報システムのトータルデザインの方向性」は、今後の政府の方針や自治体DXの進め方をよく表しており、その後の2020年12月の「デジタル・ガバメント実行計画」や「自治体DX推進計画」、2021年6月の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」にも反映されているようです。

今回は、国と地方の情報システムの現在の姿とめざすべき姿、およびトータルデザインを再確認し、国と地方の真のデジタル化に向けて理解を深めていきます。

現在の姿

国と地方の真のデジタル化に向けてめざすべき姿を確認する前に、国と地方の情報システムの現在の姿(2020年時点)を下記の図を見ながら振り返りましょう。

[イメージ]参考:国・地方の情報システムのトータルデザインの方向性(首相官邸)
参考:国・地方の情報システムのトータルデザインの方向性(首相官邸)

自治体においては、住基、戸籍、児童、介護、地方税などの業務があり、それぞれのカテゴリーごとにパッケージソフトウェアを導入しています。導入するパッケージソフトウェアは全国的に統一されておらず、自治体ごとにバラバラです。さらに、住民との窓口としてのマイナポータルや、民間との窓口としてのe-Gov、J-grantsなど、オンライン上で行政手続きが可能なポータルサイトも複数存在しています。また、政府のシステムも組織ごとに存在します。

自治体の業務システムや窓口としてのポータルサイト、政府のシステムがバラバラに存在していることにより、次のような問題も発生しています。

  1. 住基ネット・情報提供ネットワークシステムともに関係属性(世帯や親子関係など)を連携できない。
  2. マイナポータルは、事前記入型申請に対応していない。
  3. 政府の各省庁のシステムは、システムごとに文字コード、外字などが異なる。
  4. 戸籍、住民基本台帳は漢字氏名を利用しているが、自治体ごとの外字が存在する。また、一部の団体ではカナ氏名も持つが公証されていない。

このように、現状の国と地方のシステムには、自治体のシステムの標準化やシームレスなデータ連携によるスピーディーな行政サービスの実現など、解決すべき課題があります。

国と地方の真のデジタル化に向けてめざすべき姿

続いて、国と地方の真のデジタル化に向けてめざすべき姿(2025年時点のシステム予想)を下記の図で確認してみましょう。

[イメージ]参考:国・地方の情報システムのトータルデザインの方向性(総務省)
参考:国・地方の情報システムのトータルデザインの方向性(総務省)

図中の主な項目については、以下の表をご参照ください。

項番 項目 詳細
1 公共サービスメッシュ データの照会・提供だけでなく、プッシュ型通知、更新を行うことができ、庁内連携・団体間連携・民間との対外接続に一貫した設計で対応できる仕組み。
デジタル政府の核心であるワンスオンリー(一度提出した情報は、二度提出することを不要とする)を実現し、国民の負担を減らして行政のコスト削減・正確性向上を図る。
2 公金受取口座 公金出納用の口座。
国民が任意で1人1口座をマイナンバーとともに登録し、行政機関などが当該口座情報を緊急時の給付金やさまざまな公金の給付などに活用。
3 JPKI J-LIS(地方公共団体情報システム機構)が運用している公的個人認証サービスの略称。 JPKIを利用することによって、オンライン上でさまざまな行政手続き(オンラインによる本人確認など)を行える。
4 公共共通SaaS 突発的な事務に対応できる、汎用的なシステム。
5 共通BCP 大規模災害発生時を見据えた、自治体共通の業務継続計画。
6 民間タッチポイント 利便性の高い国民・民間事業者向けポータルサイト。
住民や民間事業者の窓口を民間タッチポイントに集約し、各種申請を一元化する。

このように、政府は公共サービスメッシュを核として、分散管理を前提としたワンストップなシステムを実現することをめざすべき姿としています。
また、これらのシステムは、自治体ごとに段階的にGov-Cloud上へ移行する計画も立案されています。

これらを実現することで、現状の国と地方のシステムにある課題が解決され、「デジタル完結率の向上」、「新たなデジタルセーフティネットの構築」、「国と地方の一体推進」が可能となります。

国・地方の情報システムのトータルデザインと今後の方向性

「国・地方の情報システムのトータルデザインの方向性」で示されたトータルデザインを受けて、政府は以下の取り組みを早期に実現しようとしています。

[イメージ]トータルデザインを通じて早期に実現したいこと
出典:国・地方の情報システムのトータルデザインの方向性(総務省)

直近で推進する具体的な施策としては、以下のとおりです。

  • 自治体業務の標準化
    業務仕様のカスタマイズをなくします。
  • Gov-Cloudの活用
    クラウドの共同利用を推進します。
  • 文字情報基盤の活用
    自治体や政府機関の相互運用時の難しさ、外字作成のコストを解消します。
  • 行政手続きのオンライン化
    行政手続きのオンライン化を推進することで、住民の利便性を向上します。
  • 情報提供NWS(情報提供ネットワーク)および住所、氏名などの本人確認情報を有する住基ネットにおけるプッシュ通知
    複数の機関間において、機関ごとに個人番号やそれ以外の番号を付して管理している同一人物の情報を紐付けし、相互に活用する仕組みである情報提供NWSや、住基ネットに登録されている個人情報を活用し、災害時などに政府や自治体からプッシュ型の情報発信を可能にします(2022年度通常国会で実現に向けて検討予定)。

このように、デジタル社会の実現に向けた動きは今後もさらに加速していくことが予想されます。国と地方の情報システムの現状とめざすべき姿を再度確認し、トータルデザインの方向性を理解した上で、個々の自治体DX施策との関連性を意識して計画的に推進していくことが重要です。

執筆者プロフィール

[画像]森重 福一

森重 福一(自治体ICTコンサルタント)
株式会社 日立システムズに入社し、前半は中央官庁のSEとして大規模プロジェクトを経験、後半は自治体のパッケージ開発部門で電子自治体や地域情報プラットフォーム対応に携わる。日立システムズ退社後も、国や自治体関連のコンサルティング業務をメインに活動中。自治体クラウドやマイナンバー対応に携わり、個別案件の提案、講演会、勉強会、ユーザー会などを精力的に取り組み最新情報の共有、発信に努めています。

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