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――自治体を取り巻くICT環境についても少しお話を伺いたいと思います。最近は業務システムのクラウド化を検討されている自治体が非常に多いと思いますが、自治体クラウドに対するお考えをお聞かせください。

「定住自立圏構想」の発想でクラウドを導入

東日本大震災でデータ喪失したり、バックアップしていても同じ市町村内にバックアップしていたりして、大変なことになったところがありました。こういったリスクを軽減するという意味で自治体クラウドは重要だと思います。
それから、自治体のサービスや業務を統一するという話にも関係してきますね。

市町村合併がずいぶん進みましたが、地域ごとにまだら模様で、必ずしも住民の生活圏と自治体のエリアが一致していないということがあります。合併自体ハードルが高いものだし、当時は法律で進められたのですが、あくまで自主的合併ということでしたから、そういった状態になっています。また、多くの地域では、人口規模を基準に考えていた。だから住民の日常的な動きに必ずしも自治体のエリアが合っていないわけです。都心では40キロ、50キロ通勤している人も多い。地方でも30キロくらい通勤している人はざらにいます。でも、すべての地域で人の動きに合わせた自治体構造になっているわけではないから、勤務地の近くで住民サービスを受けようと思っても、受けられないことが多いですよね。

こうした場合に自治体が何を考えるべきかというと、例えば三つの自治体が30キロ圏内にあれば、その三つの自治体が連携・協力してサービスを行うようにすることです。
合併しなくても、抜本的広域連合のようなものをつくって、ほとんどのことは一緒にやるけれども、コミュニティの維持・再生、学校の運営、地域文化の伝承、地域おこしなどは別々にやる、というようなものでも一つの答えになるんじゃないかと考えてるんです。
住民の生活圏に合わせたサービスを提供するためには、そのエリアで同じシステムを利用することが必要になりますよね。そう考えたときに自治体クラウドが一つのきっかけになるんじゃないかと考えています。

[写真]「定住自立圏構想」の発想でクラウドを導入するという考え方が一つの方向性だと語る椎川忍氏

「定住自立圏構想」について少しお話ししておきましょう。これは福田内閣の時ですが、地方の中心都市が圏域全体の住民の生活に必要な都市機能を整備し、周辺の市町村は自然保護、環境保全、農林水産業、青少年の健全育成、保養・休養などの機能を提供し、相互に連携するという考え方なんです。だから我々は「定住自立圏構想」の中でそういうこと(生活圏エリアで、クラウドなどを活用しながら同じサービスを提供するということ)を提案してるわけですよ。

今一番問題になっているのは医療です。例えばお産ですが、小さな町や村では産婦人科がなくて困っている。市立病院に行けば産婦人科があるけど、周辺町村から行くと市民優先だと言われるのが現状なんです。ならば、中心都市と周辺の町村で連携・協力の方法を考えて、中心都市の市立病院をみんなで使えるようにすればいい。この場合でも、定住自立圏の中で協力して、周辺町村は多少負担金を出しても、市民病院で同じように受診できるようにすればいいんです。

ニ番目に問題なのは、病院に行くまでの足(公共交通機関)の確保ですね。実際、採算性の問題があってこの足の確保ができていない所が多い。でも、例えばワンコインバスなんかを広域で結んでやれば、結構利用者が増えて採算性も上がるんです。住民の生活圏にあわせて走らせればいいんだから、隣の市の市立病院や図書館などにちゃんと行けますよということにすれば利用者が増えるわけです。

三番目の問題は、情報をみんなで共有できるようなプラットフォームづくりです。住んでいる自治体の情報だけじゃなくて、生活圏域全体の情報を共有できるようにするためには、ICTでつながったり、SNSを構築したり、CATVも繋いだりといったことが必要ですね。あとは、インフラの整備もみんなで考えてやっていければいいですね。

周辺自治体とサービスを統一、つまり、仕事のやり方を統一して、これをクラウド化してやれば、生活圏内どこへ行っても同じサービスを利用できるようになります。引っ越しても同じように手続きできたり、病院の電子カルテのようなものができて病院間で情報を共有したり、そういうことが可能になるわけです。
さらに、今国会で成立した社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)が運用開始され、個人番号カードを利用できるようになれば、両方相まって利便性の飛躍的な向上が期待できることになりますね。
このように、「定住自立圏構想」みたいな発想で、住民の生活圏に合わせた自治体連携の中でクラウドを導入するという考え方が一つの方向性だと思います。

みんなで集まってクラウドで業務を効率化させる

それからもう一つの方向性として、日立の自治体クラウドが導入されている神奈川県町村会のように、小さな町村がそれぞれでやると非効率なので、業務のやり方をみんなで統一するという考え方があると思います。これは町村だけじゃなくて、市も参加できるでしょう。つまり、単に今までやっている業務をICTにのせるのではなく、業務のやり方そのものも統一化して、行政コストを削減するためにクラウド化するという考え方ですね。

――豊橋市と岡崎市の中核市でも共同化が始まりました。

愛知県は、人口は大きいけど面積の小さな自治体がいっぱいあり、クラウドをどんどんやっていかなきゃいけない地域ですが、実際に共同化を実現するまでは大変だったでしょうね。本当によくできたと思います。
あとはリーダーシップが大事ですよね。首長さんが経費の無駄使いに気づいて指令を出せば、職員は動きます。
だけど、この分野は専門知識がないとなかなか難しいので、神奈川県町村会のように57業務をクラウド化して、4割ほど経費が削減できたなどの実例を示してもらうと動きやすいと思います。

これからは、国も県も市町村も社会保障中心の行政になるわけです。ですから、社会保障の維持、強化のために、国民の皆さんに消費税の増税をお願いする一方で、行政コストをできるだけ減らしていこうという努力も必要になります。クラウドなどのICTを利用して、イノベーションを起こしていかないといけません。

――隣り合っている市町村でも、業務のやり方の統一はなかなか難しいようですね。一緒にやろうというきっかけはどういうことがあるんでしょうか?

そうですね。合併の時も、仕事のやり方をどっちに合わせるかなどの問題がずいぶん起きました。でも、その時の苦労に比べれば、仕事のやり方の統一くらいは努力すればできると思います。
一緒にやるきっかけですが、実態的には県が旗を振ることで自治体クラウドを導入する例が多いかもしれませんね。誰か、仲介する人がいないとなかなか話がまとまらないので。国が推奨してみたり、県が推奨してみたり、多少インセンティブをつけるということがあってもいいと思います。

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