椎川忍氏と行く
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今回は、私のかつての勤務地であり、現在もNPO活動を続けている山陰地方、特に中世から一体的な歴史を持つ宍道湖・中海・大山地域の活性化にICTがどのように寄与しているかについて、具体的事例を取材しながら皆さまに紹介することができました。
他の地域でももっと効果的にICTを利活用して地域の活性化に成功している事例もたくさんあると思いますが、私が常々主張している「どんな小さな地域、どんなに条件が不利な地域でも、ICTによって世界中に物を売り、世界中から観光客を呼び込むことができるようになった」ということを、皆さまに実感を持って知っていただくために、今回は日本で人口が一番小さな鳥取県と二番目に小さな島根県の県境の事例を取り上げさせていただきました。
この両県は、小さいけれども素晴らしい自然とそれに育まれた伝統文化、さらには自然と共生する日常の生業(なりわい)を持っています。ICTとは対極にあるようにも見えますが、実はそういった地域こそICTによる地域活性化が効果的な地域なのです。
20年前を振り返ってみると、このような手法を用いることはできませんでした。従来型の手法ではコストがかかりすぎ、隠れた地域のファンを発見したり、作ったりすることは容易にできませんでした。それが今ではほとんど無コストに近い形で簡単にできるようになりました。逆にいうと、そのぶん世界中で地域間競争が起きていて厳しい時代になったともいえます。私は「最初からICTを使わないと宣言するような地域づくりなら、やらないほうがましです」といつも申し上げてきました。それほどICTは世界中の人に日常的に使われるテクノロジーとなりました。そして、それは人間の能力を100倍にも1000倍にもすることができるテクノロジーです。
簡単なソフトさえ開発すれば、どんな高齢者でも使うことができるのも大きな特徴です。
このことは、上勝町の葉っぱビジネスの例を引くまでもないでしょう。地域活性化には、企業誘致であったり、地場産業育成であったり、一次産業の振興や6次産業化であったり、いろいろな手法がありますが、私は、何をやるにしても、まず地域住民が全員参加でコミュニティーを再生し、その地域力を高めておかないと成果は上がりにくいし、そもそも地域に住む人たちの幸福感も達成されないと考えています。そのためには、高齢者も若い子供さんたちもICTを健全にかつ有効に使えるようにすることが求められています。
そのためには、私たち情報通信産業にかかわるものがもっともっと小さな地域や条件不利地域、高齢者や障がい者などの社会的弱者なども含めた様々な顧客ニーズにきめ細かく対応する努力を重ねていくことが必要と考えています。
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